ファイナンス 2019年6月号 Vol.55 No.3
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(3)赤井 財審委員○ 地方の債務をどのように考えるのか。それぞれの地方自治体は債務と認識していないが、地方全体では返すことになっている臨時財政対策債が徐々に増えている。責任が曖昧なものになっている地方債務を再認識することが大事。○ 今年の予算は税収が増加してきて、国と地方で折半する財源不足は解消されているが、その外枠で公共事業が拡大し、将来の地方の債務を生んでいる点が見逃されている。インフラ選別が必要であり、それにはまちづくりと立地適正化の視点、公共インフラ厳選の視点、財政コスト明示の視点が重要。○ 上下水道の分野に関して、国保の問題と同様に、受益者負担の徹底や広域化・共同化・一体化など新たな構造変化を生み出していくことによって、持続可能な地方行財政運営が実現できる。(4)上村 財審委員○ 地方自治法に「住民の福祉の増進」・「最少の経費で最大の効果」と書かれているが、同じ費用のもとで効果を最大化する「有効性」と、同じ効果のもとで費用を最小化する「効率性」が地方の歳出に求められている。行政は前年踏襲型になりがちであるが、業務改革や働き方改革、RPA(Robotic Process Automation)、エビデンス・ベースト(Evi-dence-Based)といったものを取り入れながら歳出改革につなげていくことが大事。○ アメリカのボストン市では、市民向けのウェブサイトに様々な行政分野をアイコン化してその行政成果を公開している。成果をエビデンスで測っていくことが非常に大事で、我が国では行政事業レビューのレビューシートに成果指標が示されており、ウェブサイトで公開されている。○ 地方自治体では、歳出改革の取組みの度合いにばらつきがあり、事業シートの情報不足、評価ができる人材や行革に関わる職員の不足、首長などトップマネジメントの意識の問題がある。最終的には成果が上がらない事業を自治体が自発的に削減できる環境の整備をどうやって進めるのかが大切。(5)角 財審委員○ 国家財政のガバナンスの体制改善のためには、財政規律の確保が必要。また、将来世代に負担を先送りしないためには、財政や社会保障に関する透明性を確保し、状況を正しく把握する必要がある。具体的には、例えば財政健全化基本法(仮称)といった法律をもって財政目標を定めた上で財政運営を進めていくべき。より信頼性の高い正確な財政目標を定めるためには、客観的・中立的な立場での経済分析、将来推計などを行う独立した財政機関を設置し、その財政見通しを政府公式の唯一の試算として位置付けて、財政運営に活用していくべき。○ マイナンバーで個人の資産・所得を正確に把握することによって、いわゆる弱者の方を救済するということも可能になる。現在はカードを作っていただいているのは10%強であり、早期に前へ進めるべき。例えば医療費自己負担を3割に引き上げる場合にも、一旦は公平に負担してもらい、真に困っている方をきちんと把握した上で、還付を行うというやり方もある。○ 団塊の世代がいよいよ2022年から75歳になっていく。この3年が税と社会保障の一体改革を含めた取組みのまさにラストチャンスと考える。(6)竹中 財審委員○ プロップ・ステーションでは、重い障がいがあっても、コンピュータネットワークなどを活用することによってベッドの上でも働いてタックスペイヤー24 ファイナンス 2019 Jun.SPOT

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