ファイナンス 2019年6月号 Vol.55 No.3
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新500円硬貨には バイカラー・クラッドを採用同時に偽造防止の観点から、500円硬貨の素材変更も準備していく。500円硬貨はすでにATMを通過してしまう偽造硬貨が発見されている。硬貨は金属でできているため、通常は何十年もの使用に耐えうるが、使われていくうちに汚れが付着し、偽造を見分けにくくなる面がある。自動販売機などには、偽造硬貨を見分けるためのセンサが設置されているが、感度を上げると単に汚れただけの硬貨もはじいてしまうし、感度を下げると偽造硬貨を見逃してしまう。一般的な硬貨は市場を流通し、日本銀行に戻ってきても再び流通させるが、500円硬貨は回収し、溶かして新しい500円硬貨として、製造しなおしている。これには大きなコストがかかるため、偽造抵抗力を向上させる目的で500円硬貨も変更を行うこととしたもの。今回の変更では、なじみのある現行のデザインを基本とし、素材の変更を行う。紙幣と比較し、硬貨は偽造がしやすい面がある。紙幣であればデザインはもとより、インクなどによりさまざまな偽造防止技術を利用できるが、硬貨は同じ素材あるいは似た素材を手に入れて、同じ模様を彫れば偽造できてしまう。そこで今回は、新しい技術であるバイカラー・クラッド(二色三層構造)を導入する。記念貨幣ではすでに利用されているものだ。現在の500円硬貨は同一の素材でで製造準備と市中対応で 約5年の準備期間を経て改刷新紙幣の発行は約5年後の2024年を予定しているが、(1)製造準備、(2)市中対応の二つの期間に分けることができる。製造準備では、紙幣の基となる原版の作製などを行う。国立印刷局の専門職員が筆や色鉛筆を使って紙幣の原図を描く。その原図を基にビュランと呼ばれる特殊な彫刻刀を使い、金属板に点や線を一本一本刻み込み、原版を作製する。また、背景の細かい模様や、彩さい紋もん(と呼ばれる幾何学模様)は、最新のコンピュータシステムでデザインする。これらの工程を経て、新しい紙幣が印刷できる段階までで約2年半を要する。一方で自動販売機やATMなどを新しい紙幣に対応させるためには、システムの開発や入れ替えが必要になる。製造準備が終わった段階でサンプル券などを企業に提供し、対応を進めていくが、この期間に2年半を見込んでいる。2004年11月の改刷は1999年以降、偽造紙幣が急増したことを受けて、急ピッチで準備を進めたため、新しい紙幣の発行が始まった時点では、自動販売機の半数程度しか対応できていなかった。再びこのような状況になれば、社会に混乱を招く恐れがあるため、今回は一定の準備期間を設け、早めのアナウンスを実施した。今回の改刷スケジュールのイメージ 約5年前回の改刷から約20年改刷実施を公表(2019年4月9日) 印刷開始サンプル券提示製造準備(約2年半)市中対応(約2年半)新紙幣発行開始(2024年度上期)10 ファイナンス 2019 Jun.

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