ファイナンス 2019年6月号 Vol.55 No.3
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特集改刷する3券種は色味を変え 識別しやすい工夫も紙幣の色味にも工夫が施されている。新一万円券が茶系、新五千円券は紫系、新千円券は青系だ。アンケート調査をしてみると、紙幣を財布から取り出す際、無意識に色味で額面を判断していることがわかった。そのため、新しい紙幣も各券種の色見を踏襲されているが、実は裏面のデザインはこの色見が大きく関係している。たとえば、新千円券の裏は富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」だが、青系だからこそ富嶽三十六景の良さが表現できているが、茶系の新一万円券では、難しい面がある。また、裏面も表面同様、印刷が線で表現されるため、それに合う絵柄かどうかも選定の基準になる。これらを基本としつつ、日本を代表する建築物、自然などを中心に選定している。また、現在の紙幣の寸法は、券種によって横幅に若干の差が設けられている。これは視覚障碍者でも額面を判断しやすいようにする工夫だが、差がわずかであるため、識別しにくいとの声もある。しかしながら、寸法の変更を伴うと、自動販売機などの総入れ替えが必要になり、莫大なコストがかかる。それを回避するために、寸法の変更は見送っている。寸法の変更がなければ、偽造紙幣を識別する際のソフトウェアを変更するだけですむ自動販売機も増えている。そこで今回は、これまで視覚障碍者団体から寄せられた意見も踏まえて前述のように寸法以外の部分で券種の識別がしやすい工夫を採用している。新千円券の図案 表 北里 柴三郎(1853~1931)世界で初めて破傷風菌の純粋培養に成功、破傷風血清療法を確立。また、ペスト菌を発見。私立伝染病研究所、私立北里研究所を創立。後進の育成にも尽力。裏 富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」日本を代表する浮世絵。江戸時代の浮世絵師葛飾北斎の代表作で知名度も高く、世界の芸術家に影響を与えた作品でもある。 ファイナンス 2019 Jun.92004年以来、約20年ぶりの刷新へ新しい紙幣・硬貨発行の意義と最新技術

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