ファイナンス 2019年6月号 Vol.55 No.3
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特集紙幣に採用される肖像画は 偽造防止に貢献しているそもそも紙幣に肖像が利用されているのには理由がある。偽造を見抜くためだ。一般的な印刷は点の集まりで形を表現しているが、紙幣の場合には線の集合体になっている。複写すると、微妙なズレが生じ、肖像の表情がわずかに変わる。人間は顔の認識能力が非常に優れているため、小さな変化に気づき、偽造を見抜くことにつながるわけだ。海外の紙幣でも肖像が多く利用されているのは同じ理由からだ。ちなみにユーロの紙幣には肖像が利用されていないが、ユーロは多くの国が集まっているため、人物の選定が困難であるためだ。肖像を利用する場合、繊細なものにしなければ十分な効果を発揮できない。そのために必要なのが写真だ。つまり、写真が残っていない人物は肖像として利用するのが難しいため、必然的に明治以降の人物になる。肖像に利用できる人物には制約があるわけだ。また、1枚の写真から肖像画を作成することはなく、さまざまな角度で撮影された写真を集め、本人の表情を立体的にとらえた上で作成される。新一万円券の図案 表 渋沢 栄一(1840~1931)第一国立銀行、東京株式取引所(現 東京証券取引所)、東京商法会議所(現 東京商工会議所)など生涯に約500もの企業の設立等に関わったといわれ、実業界で活躍。また、教育・社会事業・民間外交にも尽力。裏 東京駅(丸の内駅舎)辰野金吾設計、1914年竣工。「赤レンガ駅舎」として親しまれてきた歴史的建造物。明治・大正期を代表する建築物の一つ。戦災で一部焼失、2012年復原工事完了。丸の内本屋は国の重要文化財指定(2003年)。偽造防止対策ユニバーサルデザイン1 高精細のすき入れ2 最先端技術を用いたホログラムA 指の感触で識別できるマークの形状変更及び券種毎の配置変更B 額面数字の大型化112AABB ファイナンス 2019 Jun.72004年以来、約20年ぶりの刷新へ新しい紙幣・硬貨発行の意義と最新技術

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