ファイナンス 2019年5月号 Vol.55 No.2
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貯蓄から投資への課題・日本でリスク性資産へと投資が進まない理由として、金融庁のアンケート調査では資金や知識の不足、また損失の可能性に対してのリスク性資産への抵抗感等が挙げられてる(図表7)。・また日本株式が1990年代以降長らく低迷が続いたことで、日本国民の投資の成功体験が不足しているという指摘もある。外国株式市場の株式指数は1990年以降大きく伸びてきたなか、日経平均株価はバブル崩壊以前の水準を下回っている(図表8)。・今後、家計における有価証券等を活用した資産形成を促すためには、低リスク商品の充実だけでなく、投資初心者へのマネープラン作成支援、少額からでも投資しやすい環境整備や投資の成果を適切に受け取ることができる環境整備の必要がある(図表9)。図表7 有価証券投資は必要だと思うが、 保有経験がない理由020406080その他投資はギャンブルのようなもので、イメージが良くないから投資とは金持ちがやるものだと思うから取引を行う時間的ゆとりがないからどのように有価証券を購入したら良いのか分からないから投資は損をしそうで怖いから投資の知識がないから(投資は難しいものだと思うから)まとまった資金がないから(2016年調査、%、複数回答)図表8 各国株式市場の株式指数推移(1990/1/1=100)02004006008001,0001,2001,40019909294969800020406081012141618日経平均NYダウFTSE100(英)ハンセン指数(香港)(年)図表9 有価証券の保有条件 (今後有価証券保有意向の無い者ベース)7.411.912.813.313.815.418.120.850.80102030405060その他低コストの金融商品のラインナップの充実自分に合ったマネープランが気軽に作成できる環境が提供されること税金が軽減されるなど、有価証券の保有に対して何らかの優遇措置が設けられること少額投資でも毎月積み立てて投資するような金融機関のサービスや制度の充実経済が上向きになり、今後とも相場が上昇する、又は上昇が期待できる状況になること投資に関する基礎知識が身に付いたとき低リスクの金融商品のラインナップの充実どんな条件でも保有したくない、保有し続けたくない(2016年調査、%、複数回答)「条件次第で保有意向あり」49.2%更なる投資促進に向けて・個人の資産形成促進に向けては、長期・積立・分散投資の重要性等の投資リテラシー教育・情報提供に加え、投資初心者が投資を始めやすい環境整備が進んでいくことが肝要である。・老後資金への不安感が高まるなかで、掛け金が所得控除出来るiDeCo(個人型確定拠出年金)は順調に加入者数を伸ばしており、2017年1月から加入対象範囲が拡大したこともあり、短期間のうちに大幅な拡大を記録している(図表10)。・また近年、証券会社や信託銀行などが投資家と契約し、資金の運用から管理・売買・投資のアドバイスまで全てを一括で行ってくれるラップ口座や、AIを活用し要望に沿ったポートフォリオを自動で組んでくれるロボアドバイザーを活用した手軽な投資サービスの利用が増えており、投資の知識・ノウハウがなくとも簡単に投資を始めることが可能になっている(図表11)。・より手軽に投資ができる環境が整備されつつあり、現金ではなくポイントを活用した金融サービスも登場してきた(図表12)。今後の更なる家計での投資促進に向け、サービス・商品ラインナップの充実等を期待したい。図表10 iDeCoの加入者数の推移0501001501233691212016201720182019(万人)第1号(自営業者等)第2号(会社員等)第2号(公務員等)第3号(専業主婦等)図表11 ラップ口座残高の推移01234567891069123691236912201620172018(兆円)図表12 ポイント活用等による新たな 金融サービス楽天ポイント投資楽天証券ポイント・楽天スーパーポイントで、楽天証券が扱う投資信託を購入できる。投資信託の買い付け(運用)が100ポイント(100円)からと手軽に運用ができる。ドコモのdポイント投資NTTドコモ発行のdポイントが、ロボアドバイザー大手「THEO」の金融商品の価格に連動するサービス。2つの投資信託銘柄を選ぶだけで、100ポイントから投資体験ができる。セゾンのポイント投資「永久不滅ポイント」をマネックス・セゾン・バンガード投資顧問の投資信託の価額に連動させることで、ポイントを運用。1ポイントから投資可能で、ポイントで積立投資も可能。(出典)日本銀行「資金循環統計」、総務省「住宅・土地統計調査」、国土交通省「住生活総合調査」、金融庁「国民のNISAの利用状況等に関するアンケート調査(2016年2月)」、国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト 業務状況 加入者数等について」、Bloomberg、日本投資業顧問協会 統計資料、各社IR資料 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2019 Apr.53コラム 経済トレンド 59連載経済 トレンド

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