ファイナンス 2019年5月号 Vol.55 No.2
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コラム 経済トレンド59大臣官房総合政策課 調査員 檜山 直稔/村田 亮家計の金融資産動向本稿では、家計の金融資産構成の変化と今後の課題等について考察した。家計の金融資産動向・近年、雇用・所得環境が好調ななか、貯蓄がプラスに推移することで、現預金を中心に個人金融資産残高は右肩上がりに増加している(図表1、2)。・構成比の推移をみると、個人が最も保有する金融資産は依然として現預金であるが、低金利による流動性預金と定期性預金の金利差縮小もあって、定期性預金の割合が減少し、流動性預金割合が高くなっている。リスク性資産の割合は増加傾向にあるが、依然としてリーマンショック前の水準を下回っている(図表3)。図表1 個人金融資産の残高02004006008001,0001,2001,4001,6001,8002,0002011121314151617(兆円)その他保険・年金等株式等・投資信託債務証券現預金(年度)図表2 主要金融資産のネット取引額の 推移-15-10-5051015202530352011121314151617(兆円)その他対外証券投資保険・年金等株式等・投資信託債務証券現預金(年度)図表3 金融資産構成比の推移(注)リスク性資産は株式等と投資信託の合計。(年)01020304020070809101112131415161718(%)流動性預金定期性預金リスク性資産保険・年金等「持ち家信仰」の変化・日本でリスク性資産への投資が進んでこなかった要因として、家計資産の多くを占める住宅資産(持ち家)の保有率の高さや住宅市場の流動性の低さ等がリスク性資産への投資を抑制していることが指摘されている。しかしながら近年、勤労世代の持ち家保有比率は低下傾向にあり、今後の持ち家保有に係る意向についても低下傾向にある(図表4、5)。・持ち家保有比率等の低下が、リスク性資産への投資につながっているかというとそういう訳でもなさそうだ。リスク性資産増加の内訳を確認してみると、株式等の時価増加が大きく寄与している一方で、株式等の取得を売却が上回っており、家計のリスク性資産への投資が伸び悩んでいることが窺える(図表6)。図表4 年齢別持家比率の変化02040608010025歳未満30歳-39歳25-29歳50-59歳40-49歳60歳以上(%)1988年2013年図表5 今後の居住形態意向の変遷0204060801002013年2008年2003年2008年2013年2003年現在借家の世帯現在持家の世帯(%)持家への住み替え借家などへの住み替えこだわらない不明図表6 リスク性資産の推移(年)117167217267317-50050100150201112131415161718(兆円)(兆円)フロー(取引額)調整(時価等)ストック(右軸)(注)フロー(取引額)、調整(時価等)は、2011年からの累計値52 ファイナンス 2019 Apr.連載経済 トレンド

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