ファイナンス 2019年5月号 Vol.55 No.2
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責任を負っています。一方、政府自身が自然災害に備えて民間保険会社から保険を購入する例はなく、途上国での取組が奇異に映るかもしれません。しかし、グローバルに見れば、先進国であっても政府が保険に加入する例は少なくありません。例えばニュージーランドでは、インフラ施設が災害を受けた場合の再建額の中央政府と地方政府の災害後の負担割合を60:40としつつ*2、地方政府は負担を賄うために民間保険会社が提供する保険に直接加入しているほか、水道等の地下インフラについては地方政府独自のリスクプールを設けて保険に加入しています(Whiteled 2018)。オーストラリアも、特に州政府において主にインフラ向けに民間再保険を活用したリスクプールを設けています。途上国は、先進国以上に災害後の財政対応に大きな制約があります。自国経済・財政に対する信用が低いため、災害後に国債発行などで資金調達することも困難です。このため、事前に資金を備える予備費や基金だけでなく、災害時に備えた融資プログラムや保険プログラムを活用しています。*2) 日本では、災害復旧関係事業における国庫負担は66.7%であり、地方負担分には起債(地方債)充当が可能。起債のうち95%を交付税措置することにより、災害発生年災の場合、地方公共団体の実質的負担額は1.7%(国土交通省)。・国際会議への貢献:G20、APEC、ASEAN+3等の国際会議において、議長国等の依頼に応じて、レポート作成やセミナー開催等による知見の共有に貢献しています。世界銀行は途上国支援を軸にしつつ、IMF、OECD、ADB等の国際機関との共同研究や損害保険会社の団体(Insurance Development Forum)との連携等を通じて、官民に幅広いネットワークを有しているため、議長国等の要請に応じて各政府・機関の出席を働きかけることが可能です(世界銀行では、これをconvening powerと呼んでいます)。・金融取引:世界銀行は、大災害債権(キャットボンド)発行や保険契約仲介も行っています。日本の各投資家や保険会社等との契約には世界銀行東京事務所が大きな役割を果たしており、これまでに多くの取引において日本企業が参加しています。世界銀行と日本の連携災害リスクファイナンスに関する途上国支援が国際的な注目を集めた先駆けは、カリブ海島しょ国で2007年に設立された災害リスクプール(CCRIF)です。これは、日本の資金支援による世界銀行の技術支援か図3:世界の災害リスクプール出所:世界銀行AnguillaAntigua & BarbudaBarbadosBelizeCayman IslandsDominicaGrenadaHaitiJamaicaSt Kitts & NevisSaint LuciaSt. Vincent & the GrenadinesTrinidad & TobagoTurks & Caicos IslandsNicaraguaBurkina FasoMaliMauritaniaNigerSenegalThe GambiaMarshall IslandsSamoaTongaCook IslandsVanuatuCambodiaIndonesiaJapanLao PDRMyanmarSingapore ファイナンス 2019 May.49海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連載海外 ウォッチャー

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