ファイナンス 2019年5月号 Vol.55 No.2
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フランスの歌手といえば、だれが思い浮かびますか。フランスの歌といえばやっぱりシャンソンですから(もっともフランス語ではChansonはあらゆる歌を意味するのですが)、イヴ・モンタン(Yves Montand)とか、エディット・ピアフ(Édith Piaf)あたりが代表格でしょうか。1960年代とか1970年代の歌手になると、昨年1月に亡くなったフランス・ギャル(France Gall)とか、(バルタン星人の名前の由来の一つだとも言われる)シルヴィ・ヴァルタン(Sylvie Vartan)とか、ミシェル・ポルナレフ(Michel Polnare)とかも日本でよく知られています。そうそう、イギリス人ではありますが、ジェーン・バーキン(Jane Birkin)もフランスの歌手と言っても良いかもしれません。さらに、こうしたフレンチポップスの人たちとはちょっと違うかもしれませんが、一昨年12月に亡くなったジョニ・アリデ(Johnny Hallyday)とか、昨年10月に亡くなったシャルル・アズナヴール(Charles Aznavour)といったフランスを代表する国民的歌手も、割と知られているかもしれません。(ちなみに、ジェーン・バーキンとシャルル・アズナヴールには、昨年日本から勲章が授与されています。)でも、今日取り上げたいのは、もっともっと新しい世代のフランス人歌手たちです。選んだ視点は、日本とのつながりを想像させる歌手(もっとも最後の一人は完全なこじつけですが)。そして、この記事を見な*1) フランスでは、Mangaという言葉自体が「日本スタイルのマンガ」を意味するので、それで日本的テイストに仕上がっているのです。がら、まずはインターネットで、どんな歌を歌っているのか、見てもらえればと思います。フランスで今流行っている歌、なかなか良いですよ。まず一人目は22歳の女性歌手ルアンヌ(Louane)。2014年にフランスで公開された大ヒットした映画「La Famille Bélier」(直訳は「ベリエ家の家族」)、日本では翌年に「エール」という名前で公開されましたが、耳が聞こえない家族の家で一人だけ耳の聞こえる主人公の16歳の女の子の役を演じて、一躍有名になりました。この映画でルアンヌが歌ったのは「Je vole」という曲。直訳すれば「私は飛び立つ」ですが、元々はフランス歌謡界の大御所ミシェル・サルドゥ(Michel Sardou)の曲で、「青春の翼」という訳題が付いています。歌の才能を認められて家族を離れてパリに旅立つという映画のストーリーに合わせて、親から旅立つ子どもがその気持ちを切々と歌うこの歌は、ルアンヌの伸びやかでしかし少し悲しげな歌声で、映画を見に来た多くの親たちを泣かせたのではないかと思います。なぜ、日本とのつながりでルアンヌのことを取り上げたかというと、それは彼女が2017年にシングルで出した「Si t'étais là」という曲のビデオクリップが、日本を舞台にしたアニメだからなのです。私は、そんなこと全然知らずに、車でこの歌をよくかけていたのですが、ある日インターネットで、このビデオクリップを発見してすごく驚きました。調べてみると、このビデオクリップは、ルアンヌがマンガ風*1のアニメ(un dessin animé de type manga)にしたい、といったフランスの若手歌手は 日本がお好き?(Les jeunes chanteurs français aiment-ils le Japon ?) ファイナンス 2019 May.41SPOT

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