ファイナンス 2019年5月号 Vol.55 No.2
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る考えを表明した。債務問題に関しては、債務国と公的および民間の債権者の双方が、債務の透明性・持続可能性確保に向けて協働することの必要性を指摘した。借入国の能力強化のため、IMFの「決定のためのデータ基金(Data for Decision (D4D) Fund)」と世銀の「債務管理ファシリティ第3フェーズ(DMF III:Debt Management Facility-III)」への拠出を表明するとともに、債務持続可能性の課題を根本的に解決するために、国内資金動員(DRM:Domestic Resource Mobilization)を強化し他国からの借入に過度に頼らない財政を構築することが必要であり、世銀グループおよびIMF等の開発パートナーが税に関する協働のためのプラットフォーム(PCT:Platform for Collaboration on Tax)を通じてより効果的に協調することが重要であるとの考えを示した。自然災害に対する強靭性の強化に関しては、災害の発生に備えDisaster Risk Financing and Insurance(DRFI)の活用を進めていくことの重要性について強調し、東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF:Southeast Asia Disaster Risk Insurance Facility)について、参加していないASEAN+3各国の参加への期待を表明した。上記に加えて、IDA第19次増資交渉が本格化することに合わせて、質の高いインフラ投資・UHCおよびそれを支える持続的なファイナンス・自然災害に対する強靭性・債務の持続可能性が、IDA18の5つの政策テーマを補完・強化する取組みとしてIDA19に反映されていくべきであるという問題意識のもと、IDA19の増資交渉において建設的かつ積極的な役割を果たしていく考えを示した。4出張者小話今回のG20は、日本議長下での初の大臣級会合であったため、サブ面・ロジ面ともに注意深い準備と機敏な現場判断が求められる会合であり、いくつもの印象的な場面があった。G20の慣習ともいえる世界経済セッションのワーキング・ディナーでは、日本から輸送したマグロを用いて寿司が振る舞われた。大臣がスピーチでマグロの寿司を紹介した際に広がったように感じる和やかな雰囲気や、各国の大臣や国際機関の長が白熱した議論を交わすかたわらその寿司を満足そうに完食している姿、こうした議場セッティングによって舌が滑らかになったかのように各国の代表の口から飛び出す即興のジョークや鋭い見解に、国際会議の醍醐味を感じることができたように思う。G20のように大規模な国際会議を運営するために各個人が行えることは、経験の長短や役職の軽重こそあれ、とても小さい。各人はそれぞれの持ち場、例えばサブ室や会議場内のパネルの後ろ、建物のどこかの戸口、メインテーブルやバックベンチの自席、こうした限られた空間において限られた時間を精一杯自分の役割を果たすことに使う。しかし、こうした各人の役割と仕事の積み重ねにより、ふと気づけば大きな国際会議が成立する。各個人の具体的な努力の上に成り立つ日本議長という抽象像が、各国の目から見て堂々としたものであったことを強く願う。(以上)40 ファイナンス 2019 May.世銀・IMF春会合およびG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要 SPOT

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