ファイナンス 2019年5月号 Vol.55 No.2
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らかにし、実践的なアプローチを検討することが重要という認識が示された。また、技術革新に関し、暗号資産を所管する各国当局・国際機関をリスト化した暗号資産当局者台帳の策定に歓迎の意が示されたほか、分散型金融技術が金融の安定性や規制、ガバナンスに与える影響など、技術革新が金融セクターに与える影響について幅広く議論を行った。2国際通貨金融委員会(2019年4月13日)国際通貨金融委員会(注)においては、世界経済の動向等について議論が行われた。(注) 国際通貨・金融システムに関する問題についてIMFに助言および報告することを目的として1999年に設立。以降、春・秋の年2回開催。今回は第39回目。麻生大臣は、ステートメントにおいて、世界経済は2018年後半より減速の兆しを見せており、本年後半からは、緩和的な金融環境、一過性の減速要因の消失、経済刺激策の発効により改善が見込まれるものの、想定よりも弱い世界経済の成長、金融環境のタイト化、貿易に関する緊張の継続といった下方リスクに引き続き直面している点を指摘した。足元の日本経済の状況に関しては、世界経済の成長の減速は、外需のマイナス寄与という形で日本経済にも影響を及ぼしているものの、雇用・所得環境の改善や高水準の企業収益といった個人消費や設備投資等を支えるファンダメンタルズは堅調で、全体としては内需を中心に緩やかな回復が続いているとの見方を示した。また、消費税率の引上げにも触れ、これにより中長期的な財政健全化だけでなく、増収分の一部を幼児教育の無償化や社会保障の充実に用い、包摂的な成長も実現するという方針を述べた。引上げに当たっては、引上げに伴う需要変動の平準化を図るための「臨時・特別の措置」など、経済への影響を十二分に乗り越える対策を講じる、と説明した。公表されたコミュニケにおいては、「世界経済の持続的な成長を支えるマクロ経済政策と構造政策を通じて、過度な世界的不均衡を削減するために協働する」、「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済および金融の安定に対して悪影響を与え得ることを認識する」等、我が国の主張に沿った記述が引き続き盛り込まれた。また、IMFの業務面では、加盟国が強靭性を強化し持続可能でより高い成長を確保するために、加盟国の状況に応じた政策提言と、必要な際の国際収支ニーズに対する資金支援の提供を実施することが支持された。3世銀・IMF合同開発委員会 (2019年4月13日)今回の開発委員会(注)においては、世銀グループの増資パッケージの実施や新興・途上国の長期的経済成長に関する課題など、世銀グループの開発支援をめぐる様々な政策課題について議論が行われ、日本からは麻生大臣が閣僚級制限昼食会に、浅川財務官が開発委員会本会合に出席した。(注) 開発をめぐる諸問題について世界銀行・IMFに勧告および報告を行うことを目的として1974年に設立。以降、春・秋の年2回開催。今回は第99回目。一連の会合において、日本は、マルパス新総裁の就任を歓迎するとともに、そのリーダーシップの下、途上国の持続可能な成長と貧困削減に向けて世銀がより一層大きな役割を果たすことへの期待を述べた。また、IBRD増資については、所要の国内措置を完了し第一回目の払込みを行ったことを報告した。更に、IBRDの卒業政策も含め増資パッケージで合意された改革の着実な実施を求めるとともに、IFC増資の早期の総務決議採択への期待を述べた。新興・途上国の長期的経済成長を実現するにあたり日本が重視する事項としては、質の高いインフラ投資・国際保健・債務持続可能性・自然災害に対する強靭性の強化の各分野について、日本のスタンスを示すとともに、G20議長国として開発効果を高めるための方策に関する議論をリードしていく旨、表明した。具体的には、質の高いインフラ投資については、プロジェクトの組成段階における環境整備や優先順位付け、プロジェクト実施段階における調達の透明性の確保の必要性を説明するとともに、インフラの「質」が満たすべき要素として、ESGの観点、中でも利用の開放性や債務持続可能性が重要であると強調した。国際保健に関しては、途上国におけるUHCの推進や持続的な保健財政システムの構築に向け、6月28日にG20大阪サミットのマージンで財務大臣・保健大臣合同セッションを開催し、UHCファイナンスへの関心を高めるとともに、財務大臣と保健大臣の連携を促してく考えを示した。また、関連して、PEF(Pandemic Emergency Facility)のより一層の機能強化を支持す ファイナンス 2019 May.39世銀・IMF春会合およびG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要 SPOT

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