ファイナンス 2019年5月号 Vol.55 No.2
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2019年4月11日~13日にかけて、アメリカ・ワシントンD.C.にて、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(以下「G20」)、国際通貨金融委員会(IMFC)、世銀・IMF合同開発委員会(DC)等の国際会議が開催された。以下、本稿では、G20、国際通貨金融委員会および世銀・IMF合同開発委員会に関して議論の概要を紹介したい。1G20(2019年4月11日~12日)今回のG20では、日本議長下で行われる初のG20財務大臣・中央銀行総裁会議として、世界経済および6月の福岡のG20財務大臣・中央銀行総裁会議に向けた作業の進捗状況に関して、議論を行った。世界経済のセッションでは、世界経済は足下で減速しており、様々な下方リスクも存在する一方、本年後半から加速し、中期的に堅調に推移していくという認識を各国と共有した。麻生大臣は、下方リスクへの適切な対応として国際協調の重要性が問われている中で、議長国としてG20での政策議論や国際機関との連携に取組んでいく方針を示した。さらに、今年10月に消費税率の8%から10%への引上げを実施すると同時に、需要変動を乗り越える十二分の財政措置を講じることにより、少子化問題を克服しつつ高齢化社会への対応を見据えた持続可能な社会保障制度を確保していく旨、G20各国に説明した。6月の福岡のG20財務大臣・中央銀行総裁会議に向けた作業の進捗状況に関するセッションでは、日本議長下のG20財務トラックでのプライオリティとして、3つのテーマの下で掲げている10項目について議論を行った。第一のテーマである「世界経済のリスクと課題」に関しては、世界経済のセッションで議論を行ったリスク・サーベイランスの他に、グローバル・インバランスの問題や高齢化への対応について取り上げた。麻生大臣からは、グローバル・インバランスの問題は世界経済に対してリスクになりかねないという認識のもと、リスクを削減するためには、例えば過剰な企業貯蓄および金融市場の過熱などの国内のインバランスを解消していかなくてはならない、と述べた。さらに、高齢化について、経済成長の観点から、あるいは財政・金融政策、また金融包摂の観点から、様々な政策面での課題をもたらすという点を説明した。第二のテーマとして「成長力強化のための具体的取組」を議論した。質の高いインフラ投資については、経済への波及的効果を長期にわたってもたらすものであるという観点を示し、質の高いインフラ投資を促進するため、G20において、新たな原則の策定、ガイダンスノート、および支援策リスト(データベース)の作成を行っている旨、報告した。また、途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を促進するために持続可能な保健財政システムを構築することが、人的資本の蓄積に寄与する点を指摘した。さらに、多くの低所得国において債務脆弱性が高まっている状況に際し、債務の透明性を向上し債務の持続可能性を確保することも重要な優先課題であり、債務者および官民の債権者の協働を要請している、と述べた。第三のテーマである「技術革新・グローバル化がもたらす経済社会の構造変化への対応」については、国際租税に関して、経済の電子化に伴う課税上の課題に関するコンセンサス・ベースの解決策を2020年までに追求するというG20としてのコミットメントを確認し、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting; 税源浸食と利益移転)合意事項の実施、税の透明性および税と開発の取組みを歓迎した。金融分野では、グローバルな金融市場の一体性を阻害しうる事例・課題を明世銀・IMF春会合および G20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要(2019年4月11日~13日、於:アメリカ・ワシントンD.C.)国際局国際機構課長 緒方 健太郎/国際局開発機関課長 今村 英章38 ファイナンス 2019 May.SPOT

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