ファイナンス 2019年5月号 Vol.55 No.2
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ケート調査の結果も踏まえ、「県内企業の生産性向上・収益力(稼ぐ力)強化」→「雇用者の待遇改善・所得水準向上」をサポートする観点から、当支店を含む日本銀行の本支店が経済調査活動の過程でヒアリングした「全国および県内企業の具体的な取り組み事例」等を紹介している。そして、「県内企業の生産性向上・収益力(稼ぐ力)強化」→「雇用者の待遇改善・所得水準向上」の実現は、沖縄県の大きな課題である「子供の貧困」*34や「人材育成」の解決にもつながると考えられる。という。以上3(1)~(6)及び4で、沖縄公庫と日本銀行那覇支店による沖縄経済の調査・分析の取組みについて概観した*35。短期的な経済の絶好調さの裏に、なかなか改善が見られない中長期の構造問題も浮かび上がってきたと思う*36。*34) 「沖縄子どもの貧困白書」(2017年)の「沖縄振興体制によるゆがみ」(島袋純・琉球大学教授・執筆)で、「沖縄では、『貧困』あるいは『こどもの貧困』が、最大の懸案事項であるという問題意識は極めて希薄であった。しかし、2015年10月、島尻安伊子参議院議員・沖縄選出議員が沖縄担当大臣に就任後、沖縄の最大の課題を『子どもの貧困』とし、自らの任期の最重要使命と位置づけ、その解決のための対策費として、2016年度の沖縄振興予算要求に10億円に上る特別な予算枠の確保を要求したことが、ひとつの転機になった」とする。上間陽子著「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」(2017年)は、この関連では見逃せない労作である。*35) その他、例えば、一般社団法人南西地域産業活性化センター https://niac.or.jp/ も様々な調査・分析を行っている。*36) 最近の沖縄経済の活況や、今後の展望については、安里昌利著「未来経済都市 沖縄」(2018年11月)や、富川盛武著「アジアのダイナミズムと沖縄の発展」(2018年9月)などが近刊では手ごろな著作である。前者については、月刊コロンブス2019年3月号(東方通信社)の「読書の時間」において紹介した。*37) 財務時報(平成27年6月:第678号):東京大学社会科学研究所 大瀧雅之氏による講話「経済学の考え方と官公庁統計を用いた経済の見方」を開催おわりに高校の先輩というご縁があり、経済財政理論研修以来、長年ご指導いただいた、故大瀧雅之・東京大学社会科学研究所教授は、昨年7月2日に急逝されたが、2015年5月に、財務局新人職員向けに行った講話*37で、例えば、「君らの時代にとって大事なことは,知らない勇気を持つことです。情報はあればあるほど自分にとってためになるとか,有利になるという物の考え方をしがちですが,それは誤った考え方です。例えば,ネットやテレビで流される情報が本当の情報であるか,あるいは,単に利益を誘導するための情報であるかということを,君たちは見分ける力がありますか。いかにも何かありそうだという情報の流し方に対して,そういう情報を全く無視して通るという強い勇気が君たちの世代には必要です。知らなくてもよいことを知らないで済ませる勇気というのが非常に大事です。」、「物事を考えるということは,自分に向き合うということですから,自分を向上させるには絶対自分から逃げてはいけません。自分と向き合うことが必ず図表10 代表者平均年齢の全国比較57.858.259.558.156.357.856.658.758.859.560.159.257.358.257.559.155.060.065.0全業種建設業製造業卸売業小売業運輸・通信業サービス業不動産業代表者の平均年齢(歳)平成26年(沖縄)平成29年(沖縄)代表者の平均年齢平成 2年(A)平成29年(B)年齢差(B-A)年齢差順位53.8歳61.4歳+7.6歳1位51.5歳58.8歳+7.3歳2位53.9歳61.0歳+7.1歳3位52.9歳60.0歳+7.1歳3位53.1歳60.2歳+7.1歳3位-秋田県沖縄県青森県千葉県山梨県全国54.0歳59.5歳+5.5歳資料:(株)帝国データバンク「全国社長分析」、同福岡支店「九州・沖縄地区の社長分析」 ファイナンス 2019 May.35「魅せる沖縄」の今後SPOT

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