ファイナンス 2019年5月号 Vol.55 No.2
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【福岡特集】「福岡県で思い浮かぶラーメンは?」と、私が皆様方にお尋ねしたとしよう。答えは、大体想像できる。ほぼ100%の方々が「豚骨ラーメンでしょ」と回答するに違いない。確かに、おっしゃるとおり。福岡県は、正真正銘の豚骨ラーメン王国だ。例えば、全国各地や海外に幅広く店舗を展開する『一風堂』、仕切り付きの個別カウンター席を設け、独りでも気兼ねなく入店できるシステムが好評な『一蘭』、近年都内のターミナル駅近傍に続々と店舗を構え、いずれの店舗も上々の人気ぶりを誇る『博多一幸舎』。都内及びその近郊に住む人々にとっても身近な存在であるこれらの店舗の本拠地は福岡県。そして、これらの店が提供するのは、出汁が白濁するまで豚骨を炊き上げた豚骨ラーメンだ。また、福岡県内に目を転じてみても、ここ数年こそスープが透き通った淡麗系の人気店等も増えつつあるが、依然として、ラーメンシーンのメインストリームは豚骨系。この情勢は、一朝一夕では覆りそうにないのが現状である。ただ他方、福岡県から都内へと進出しているラーメン店が提供する「豚骨ラーメン」は、上に記した3店舗を含め、いわゆる「博多系」と総称されるジャンルに属するものが大部分を占めている。都内の方々の認知度が高いのも、同系に限られる。あまり知られていないが、豚骨ラーメンにも様々な種類がある。「熊本ラーメン」や「佐賀ラーメン」は「博多系」とは味わいが全く異なるし、福岡県内だけで見ても「久留米ラーメン」「長浜ラーメン」「北九州ラーメン」など、「博多系」とは別種の豚骨ラーメンが根強い人気を獲得している。そこで今回は、福岡県内でしか味わえないこれらのジャンルのお薦め店を、ジャンル別に紹介することとしたい。是非機会を見つけて足を運んでいただければうれしい限りだ。【久留米ラーメン】久留米大砲ラーメン本店福岡県久留米市は、知る人ぞ知る九州豚骨ラーメン発祥の地。諸説あるが「博多系」を含め、九州豚骨ラーメン(鹿児島ラーメンを除く)は皆、久留米豚骨ラーメンを源流とするものだ。そんな久留米ラーメンの代表格が、こちらの『大砲ラーメン』。昭和28年の創業から継ぎ足し続けた豚骨スープは、豚ゲンコツの髄が大量に溶け出したフルボディの味わい。麺は、「博多系」よりやや太い自家製ストレート。カリッと揚げた背脂の風味も絶佳のひと言に尽きる。【長浜ラーメン】元祖長浜屋福岡県を代表する名店のひとつ。豚骨のみを炊いたサラリとした口当たりの純豚骨出汁に、細ストレート麺を合わせるスタイル。同店が提供する麺メニューは「ラーメン」1種類のみ。多数来訪する市場関係者に配慮し早朝から店を開けているため、勤め人にとっても「仕事前の1杯」として最適だ。淡泊でありながらも豚骨の風味がしっかりと立ったスープは、五臓六腑に沁みわたる癒し系の味わい。カドのない柔和な仕上がりには、「博多系」とはまた別の趣がある。【北九州ラーメン】南京ラーメン黒門北九州エリアには、若干の透明感を残しつつも、豚の出汁感を徹底的にフィーチャーしたスープで食べ手を魅了するラーメン店が複数存在する。その代表格のひとつが『南京ラーメン黒門』だ。まるで鶏を素材に用いたかのような華やかな香りを放つスープは、スープ中を泳ぐ麺の姿形さえ視認できるほど。口に含めば、豚のうま味がスッと鼻腔へと抜けていくサマが実感できる。柔らかめに茹でられたストレート麺の啜り心地も至高。食べ終わる頃には、豚骨ラーメンの奥深さに、ハートを鷲掴みにされていることだろう。プロフィールラーメン探究家 かずあっきぃ(田中 一明)1972年11月生まれ。学生時代に出逢った1杯のラーメンに感銘を受け、1995年より本格的な食べ歩きに着手。「ラーメンの魅力の探究」をライフワークとし、年間700杯以上のラーメンをコンスタントに実食。総食杯数は12,000杯を超える。日本全国のラーメン事情に通暁し、各種媒体にラーメン情報を精力的に発信。大砲ラーメン元祖長浜屋北九州黒門22 ファイナンス 2019 May.かずあっきぃのラーメン探訪記連載ラーメン 探訪記

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