ファイナンス 2019年5月号 Vol.55 No.2
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Ⅰ 世界経済―リスクと課題G20各国は、世界のGDPの8割以上を占める国際金融システム上重要な国々です。G20は主要な国際経済問題について議論し、世界経済の安定的かつ持続可能な成長の達成に向けて協力することを目的としたフォーラムであり、世界経済のリスクと課題の整理は世界経済の大宗を占めるG20の最重要の責務です。(A)世界経済リスクのサーベイランス世界経済の主なリスクをモニターし、経済危機の芽を事前に摘むべく議論を行っています。4月にワシントンで行われたG20では、世界経済は足下で減速しており、様々な下方リスクも存在しているが、2019年後半から加速し、中期的に順調に推移しているという認識が共有されました。また、下方リスクへの適切な対応として、各国における適切な政策運営と国際協調の重要性を確認しました。(B)グローバル・インバランス問題への対処経常収支黒字・赤字のグローバルな不均衡(グローバル・インバランス)問題は持続可能で包摂的な成長に向けてのリスクの1つと言えます。貿易摩擦の根底にあるこの問題を貯蓄投資(IS)バランスの歪みというマクロ経済の基本に立ち返って議論することで、「二国間の貿易問題ではなく、多国間の経済政策協調の問題」「マクロ経済政策や構造改革により貯蓄投資バランスを改善して対処すべき」といった包括的でバランスのとれた理解を国際的に促進します。(C)高齢化の課題・政策対応高齢化問題は、あらゆる国が遅かれ早かれ直面する重要な課題であり、日本が先駆けて経験している点で日本の強みでもあります。財政政策・年金や金融政策・金融システムに与える影響、高齢者への金融サービスのあり方(金融包摂)等を包括的に議論し、高齢化を経済政策分野上の重要なアジェンダの1つとして、日本主導で国際社会においてハイライトします。Ⅱ 成長力強化のための具体的取組世界経済の持続可能で包摂的な成長の実現のための具体的取組を議論しています。(D)質の高いインフラ投資近年、新興国・途上国の経済成長等を背景に、膨大なインフラ需要が存在しています。そして、持続可能な経済発展を支えるためには、インフラ投資の「量」を増やすだけでなく「質」を確保していくことが不可欠です。日本議長下でのG20財務トラックのプライオリティ日本議長下のG20財務大臣・中央銀行総裁会議(以下G20)では、以下の3つのテーマの下にA~Jまでの10個のプライオリティをとりあげることとしています。これらのプライオリティは、G20が現在の国際社会において真に求められている事項に集中し効果的にその役割を果たすという観点から選ばれています。G20政策企画事務局 G20 Finance-Policy Planning Ofce, JapanG20財務トラック プライオリティⅠ.世界経済-リスクと課題Ⅱ. 成長力強化のための 具体的取組Ⅲ. 技術革新・グローバル化がもたらす経済社会の 構造変化への対応(A) 世界経済リスクの サーベイランス(D)質の高いインフラ投資(H)国際租税(B) グローバル・インバランス 問題への対処(E) 自然災害に対する強靭性の強化(I) 金融市場の分断を回避する 国際的な連携・協力(C)高齢化の課題・政策対応(F) 途上国におけるUHC(Universal Health Coverage) ファイナンスの強化(J) 金融セクターにおける技術革新 ―機会と課題(G) 低所得国における債務透明性の向上及び債務持続可能性の確保12 ファイナンス 2019 May

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