ファイナンス 2019年5月号 Vol.55 No.2
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世界銀行グループは、G20議長国として日本が行っている、カントリー・プラットフォームを通じて開発の成果を高めようとする取組みを歓迎します。すべての国際開発金融機関(Multilateral Development Banks: MDBs)を含む、開発に関連したパートナー同士の連携は、途上国が開発資金の増加による恩恵を十分に得るためにも不可欠です。MDBsや二国間ドナー、開発関係ファンドや民間セクターによる開発資金の増加は、開発を加速する機会を提供しますが、必ずしもそれを保証しません。不十分な開発デザインや実施能力、協調されていない資金供給は、プライオリティーの低い分野への投資や比較的低水準の甘受、持続可能でない債務を伴う融資条件を押し付けることを通じて、一部の国の開発目標を損なう事になりかねません。効果的なカントリー・プラットフォームは、異なる開発パートナーを結集して公的・民間投資を組み合わせ、全体としての開発効果を最大化することができます。開発パートナー間でのまとまりのある、相互補完的なオペレーションは、民間セクターからの投資の拡大やアカウンタビリティの確保にもつながります。 そうしたプラットフォーム内での協力関係は、危機の防止や、万一危機が発生した場合の迅速な対応に向けての協調をも可能とします。最後に、連携の拡大は国際公共財に関連した目標の達成に向けた動きを加速します。グローバル金融ガバナンスに関する賢人会議によるレポートは、開発主体間で更なる連携を行うことの重要性を浮き彫りにしました。G20は、日本のリーダーシップ及びフランスと韓国の共同議長の下で、カントリー・プラットフォーム確立のためのハイレベル原則を進展させました。実務上、連携とは情報交換を意味します。透明性は不可欠です。これは、どの活動や政策変更が人々の生活に対して最も影響するか議論することでもあります。この連携強化が機能するためには、途上国自身の強いリーダーシップ、そして透明性が必要です。世界銀行グループの国別に開発を進めるモデルは、G20によるカントリー・プラットフォームを発展させようとの新提案と方向性を一にしています。私たち世界銀行グループのクライアント国は私たちの出資者でもあることから、私たちの活動は効果的であるよう設計されています。私たちは何に資金提供するかを公表しますし、例えば体系的国別診断、貧困評価、公的支出レビュー、債務持続可能性分析といった戦略的かつ未来志向の分析も実施しています。私たちは自分たちの経験を他のMDBsと共有し、開発に関係するすべてのパートナーたちとの連携を強化し、G20と共に、 より一層の開発成果をもたらすための新世代のカントリー・プラットフォームを試行する準備ができてい ます。世界では、引き続き7億人もの人々が極度の貧困状態にあり、私たちのミッションはこれまで以上に緊急の問題となっています。貧しい国に対する開発と資金供給の効果を最大化する取り組みが必須です。私たちは、中位所得を向上させること、広範な成長を育むこと、極度の貧困を削減すること、雇用を作り出すこと、そして女性や若者の活躍を促進することといった前向きな成果に向けた努力をたゆまず行うことで、すべての人にとって、より強く・安定したグローバル経済を支えることが重要です。〔仮訳〕 ファイナンス 2019 May9

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