ファイナンス 2019年4月号 Vol.55 No.1
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社会から「多産少死」を経て、「少産少死」へ移行することをいう*3。出生率は2007年頃を境に死亡率を下回り、現在は人口1000人あたり出生率7.5人となっている。0歳児が各年齢まで生き残る比率を推計した生存率をみると、2015年には50%以上が85歳まで生きると推計され、1891年には40%以下であった65歳以上生存率は90%以上まで上昇している(図3)。平均寿命をみると1960年代では欧米諸国よりも短かったが、現在では85歳近くまで伸びており、まさに「人生100年時代」を見据える必要があるほど長寿化が進んでいる。少子化と長寿化の結果、人口に占める65歳以上の割合も急速に高まり、現在日本は世界で最も高齢化の進んだ国となっている。国立社会保障・人口問題研究*3) 人口転換と同時期に発生する疾病構造の変化は「疫学転換」と称され、人々が罹患する疾病や死因が感染症から非感染症に変化することをいう。疫学転換は多死から少死に至る過程のなかで語られることが多い。日本では、戦前は死因の多くを結核や肺炎などが占めていたが、現在ではがんや心血管疾患などの生活習慣病が多くなっている。*4) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」所の推計によると、2065年には総人口に占める65歳以上人口の割合を指す高齢化率が38.4%になると見込まれている*4。こうした高齢化は欧米よりも日本を含む東アジアの国々のほうが速く進行している。65歳以上人口の割合が全人口の7%(高齢化社会)から14%(高齢社会)に至るまでの期間を示す「倍加年数」をみると、欧米は高齢社会に至るまで40年程度かかっているのに対し、東アジア諸国は半分近くの20年前後である(図4)。2-2.健康な高齢者一方で、長寿化とともに、高齢者の健康状態は改善しつつある。WHOが2000年に提唱した「健康寿命」という指標は、平均寿命から「日常的・継続的な医図3.日本の生存率010203040506070809010005101520253035404550556065707580859095100105110115男性:1891-1898年男性:1955年男性:2015年女性:1891-1898年女性:1955年女性:2015年(%)(歳)(出所)厚生労働省「完全生命表」図4.倍加年数(高齢化率7%から14%に移行するまでの年数)19991999199919992002200219701970193219321929192919421942188718871864186418年20年23年24年40年46年72年85年115年2017201720192019202520251994199419721972197519752014201419721972197919791850187018901910193019501970199020102030韓国シンガポール中国日本ドイツ英国アメリカスウェーデンフランス(年)(出所)国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」 ファイナンス 2019 Apr.59シリーズ 日本経済を考える 88連載日本経済を 考える

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