ファイナンス 2019年4月号 Vol.55 No.1
57/82

買物代の伸び悩み・国別に1人当たり消費額の推移をみると、消費額が最も大きい中国が足元で2年連続の減少となっている(図表6)。・中国は消費に占める買物代の割合が大きいため、特に中国の購買動向について、代表的な品目ごとに購入率・購入単価の変化をみてみる。すると、2015年頃から「カメラ・ビデオカメラ・時計」「服・かばん・靴」といった高単価商品の購入率が減少する一方で、「化粧品・香水」「医薬品・健康グッズ・トイレタリー」といった低単価な品目の購入率が増加している(図表5、7)。・このような中国の購買動向の変化による買物代減少のインパクトは大きく、訪日客全体の1人当たり消費額を確認すると、買物代の減少等により足元で2年連続のマイナスとなっている(図表8)。図表6 国別1人当たり消費額051015202530354020121314151617中国韓国台湾香港米国(万円)(年)図表7 中国の購入率および購入単価 (2012年→2017年)0204060801002.04.06.08.010.0(購入率、%)(購入単価、万円)(注1)暦年の値を使用。(注2)「化粧品・香水」・「医薬品・健康グッズ・トイレタリー」は、2014年より新設。医薬品・健康グッズ・トイレタリー化粧品・香水カメラ・ビデオカメラ・時計服・かばん・靴図表8 費目別1人当たり消費額05101520253020121314151617(年)(万円)娯楽サービス費娯楽サービス費交通費交通費飲食費飲食費宿泊料金宿泊料金買物代買物代買物から宿泊へ~地方の魅力が牽引役~・買物代が減少傾向にあるなか、今後訪日客消費を安定的に成長させていくためには何が必要だろうか。1人当たり消費額のうち、買物代に次ぐ金額の宿泊費に着目したい(図表8)。・宿泊費と消費額の関係をみると、買物代が多い中国を除いて概ね比例関係にある。また、宿泊費が多い国は滞在日数が長い傾向にあることから、今後訪日外国人消費を安定的に増やしていくには、平均宿泊日数が増加するかたちで、宿泊費が増加していくことが望ましい(図表9、10)。・最近のトレンドとして、地方空港へのLCC就航等もあり、訪日外国人客の入国港は多様化している。 この動きをさらに進めていくことで、大都市圏だけでなく地方を中心に息づく日本独自の体験型価値に魅力を感じている外国人を大いに呼び込み、訪日客数・消費額の両方が増加していくことが期待される(図表11)。図表9 国別消費額と宿泊費韓国台湾香港中国米国051015202502468101214(1人当たり消費額のうち宿泊費、万円)(1人当たり消費額、万円)図表10 国別滞在日数020406080100中国韓国台湾香港米国3日間以内(注)回答者属性は「観光・レジャー目的」。4~6日間7~13日間14~20日間21日以上(%)図表11 入国港別外国人旅行者比率0102030405060060708091011121314151617成田空港その他の空海港関西空港羽田空港中部空港(%)(年)(出典)観光庁「訪日外国人消費動向調査」、JNTO「訪日外国人旅行者数」、法務省「出入国管理統計」、財務省「国際収支統計」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2019 Apr.53コラム 経済トレンド 58連載経済 トレンド

元のページ  ../index.html#57

このブックを見る