ファイナンス 2019年4月号 Vol.55 No.1
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化、新ビジネス創出の推進」です。これはスポーツ経営人材を育てていく、スポーツ界の人間だけではなく、経営がわかる方にもっとスポーツ界に入ってもらう、ということです。3点目が「スポーツ分野の産業競争力強化」です。新たなスポーツメディアビジネスの創出とか、スポーツを他産業と融合化させて、新しいスポーツの分野を創出していく、ということを考えています。●MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島の成功スポーツ界最大の投資はスタジアム・アリーナなどの施設です。この施設が大きな赤字を出すようではスポーツの市場規模15兆円は絵に描いた餅になってしまいますので、ショッピングセンターや飲食店、老人ホーム、病院、スポーツジムなどとスポーツ施設を一体化させて、イベントの有無にかかわらず、いつでも人に来てもらえるような利益を生む施設にしていくことを考えています。こうした取組の成功例が広島市民球場(MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島)です。駅からすぐと立地条件も良く、米国のスタジアムのように楽しい空間が広がっています。私が視察したのは試合がない日でしたが、それでもワクワクする空間でした。色んな用途で観客が訪れて楽しむことができる、そうした施設です。ここは観客動員数が多くいつも満員です。スポーツ選手たちは、人がたくさん来ることで刺激を受けてよく練習するようになります。つまり、人がたくさん呼べるような環境を整えることは競技力の向上にもつながるのです。●スポーツを通じた地域の活性化スポーツ目的の訪日外国人数は現在138万人ですが、これを約250万人にしていく、さらにスポーツツーリズム関連消費額も現在の2,200億円から約4,000億円にする、こういう計画を立てて、スポーツを通じた地域活性化を考えています。東京は、人は多いけれども場所がない。地方は、人は少ないけれども場所はありますので、キャンプの誘致や大会の開催等を通じて、経済効果だけでなく、ブランディグ・シティプロモーション効果や自分のまちへの愛着や誇りを持つ心を育むなどといった社会的効果も期待できます。●スポーツツーリズムの推進2018年3月に「スポーツツーリズム需要拡大戦略」を発表しました。官民の連携を強化するために設けられた協議会には、交通輸送機関や民間企業に集まっていただき、スポーツツーリズム需要拡大に向け様々な知恵を絞っています。スポーツツーリズムに関して現在力を入れているのは「アウトドアスポーツ」、すなわち、スノースポーツやハイキング、トレッキングなど日本の自然資源を活用したスポーツと「武道ツーリズム」です。武道ツーリズムに関しては、海外に行くと、日本の精神性とか神秘性への関心からか、空手、柔道、剣道といった武道に対する人気か高いことが分かりました。この武道を地方の活性化につなげていきたいと考えています。多くの外国人が築地市場の早朝の競りを見に来るのと同じように、インバウンドの訪日外国人を地方に流して、武道の観戦や体験をしてもらいながら、カネも呼び込むような仕組みを考えています。●アウトドアスポーツ推進宣言先ほど説明した「スタジアム・アリーナ改革」を通じて、施設を整備していくにはカネも時間が掛かります。今すぐにできるスポーツ振興は何かというと、世界に誇る日本の自然資源を活用したアウトドアスポーツがあると考えています。そこで、2017年6月に「アウトドアスポーツ推進宣言」を発表しました。ここで少し、私のイベント参加経験をいくつか紹介します。まず、私は岩手山の山開き式に出席して、2,038メートルの山頂まで登山しました。途中で大雨に見舞われるなど、苦しい思いもしましたが、1週間ぐらいすると、また山登りしてもいいかな、という気分になるのです。次に、長野県白馬村の「白馬トレイルラン2018」にも参加しました。山道を登ったり下ったりしながらのレースです。この時も大雨で、足も捻挫するなど大変でしたが、やはり1週間ぐらいするとまた参加したくなるのです。なお、当地には長野冬季オリンピック大会のレガシーがいまだ残っており、若者が積極的に運営に参加し、外国人選手の招聘なども喜んでやってくれるのです。また、「サイクリングしまなみ2018」にも参加しました。しまなみ海道を自転車で70キロ走ります。この日は高速道路も走ることができます。大変な人気で、1万人の参加者のうち、1~2割は外国人だそうで ファイナンス 2019 Apr.49職員トップセミナー 連載セミナー

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