ファイナンス 2019年4月号 Vol.55 No.1
52/82

●これからの視点「未病」先日、神奈川県の黒岩知事から「健康な状態から突然に病気の状態にはならない。その間にはグラデーションのような状態、すなわち未病という状態がある。この未病という新たな領域においてこれから新しい産業が起こってくる。」と教えていただきました。我々としてもこの新しい領域にもっと関わりたいと考えています。米国では「Exercise is Medicine」、すなわち医者が患者に薬を出す代わりに「運動せよ。」と言うことがあります。運動することで治る病気がたくさんあります。こういうことが進めば社会はもっと良くなっていくのです。イ.重要な幼児期の運動習慣運動習慣について少しお話しさせていただきます。幼児期の子供たちのスポーツ習慣、これが大人になっても大体反映されていくことが分かっています。つまり、幼児期にスポーツをやっていなければ、その後もあまりやらないのです。文部科学省は、小学生以上の児童・生徒のスポーツ教育には熱心に取り組んでいますが、盲点は幼児期にあるのです。この幼児期にスポーツ習慣を身に付けていく必要がありますが、現状は十分な取組ができる状況にありません。そこで、我々は幼児期の段階から体を動かす楽しさを知ってもらおうと、アドバイザーやプレイリーダーを派遣するなどして、幼児期における運動習慣化に取り組んでいます。今後の日本の幼児期以下の世代の子供については、好きか嫌いかは別にして、運動の習慣ができている、という方向に進めていきたい。ある程度こうした習慣ができればそれほどスポーツを嫌いにはならないはずです。運動神経が伸びる小学生くらいまでの間に体の動きづくりを身に付けさせることが重要です。ウ.スポーツのチカラで地域・経済を元気に!次はスポーツを通じた地域や経済の活性化についてお話しします。●スポーツの成長産業化スポーツは今や成長産業の一つに数えられています。スポーツの市場規模は現在5.5兆円と言われていますが、私たちはこれを2020年までに10兆円、2025年までに15兆円に拡大するという目標を立てています。15兆円のうち、スポーツツーリズムやメディア関連等で5兆円の市場を想定しています。いまだに「スポーツでお金を稼ぐのか。」と怒られることもありますが、私は「そうです。」と答えています。スポーツの市場を拡大して、利益を上げて、スポーツ環境の改善に取り組み、さらにスポーツの参画人口を増やして、またスポーツ市場を拡大していく、という正の好循環を狙っています。●スポーツ市場規模の比較外国を見てみますと、1995年くらいまでは日本のプロ野球と米国のメジャーリーグの市場規模は同じでしたが、この15年、20年の間に大きく差をつけられてしまいました。同じように、Jリーグと英国のプレミアリーグをみても、かつては同じ市場規模だったものが今では随分と差をつけられています。逆に言うと、日本のプロスポーツ産業はまだまだ伸びしろがあるということです。日本経済再生本部「日本再興戦略2016」の「官民戦略プロジェクト10」では、新たな有望市場として5つの柱を掲げています。うち2つは我々が関係する「スポーツの成長産業化」と「世界最先端の健康立国へ」となっています。では、どのような領域で前者の「スポーツの成長産業化」を進めていけばよいでしょうか。1点目は「スタジアム・アリーナ改革」です。野球場とかサッカー場、体育館をたくさん作っていこう、というものですが、これらを利益が出る施設にすることが重要です。2点目が「スポーツコンテンツホルダーの経営力強第2回連携会議に臨む厚生労働省鈴木医務技監と鈴木長官48 ファイナンス 2019 Apr.連載セミナー

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る