ファイナンス 2019年4月号 Vol.55 No.1
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調べてみますと、20代から50代くらいの方々の週1回以上のスポーツ実施率が低い(42.2%~50.0%)のです。この低さの最大の理由は「仕事や家事が忙しい」(39.9%)です。ちなみに70歳代になると、時間に余裕ができたためか、スポーツ実施率は71.3%と高いのです。成人全体でこれくらいの水準を目指していきたいと考えています。国民医療費は、右肩上がりで伸びてきています。我々スポーツをやる人間は「スポーツは健康に良い」ということを認識していますので、スポーツの普及振興が国民医療費の抑制に役立つと考えています。オリンピックやパラリンピックで何個金メダルを獲得できるか、これに注力するのは当たり前で、このほかに、「スポーツの価値をいかに高めていくか」というところに我々の仕事があります。スポーツを普及させることで国民の皆さんを元気にすることができるのです。国民ができるだけ長い期間健康でいて、しっかり働き、税金も払う、こういう姿を目標にすることで、最終的には医療費も抑制し、国家財政にも貢献することができると考えています。●「スポーツ・イン・ライフ」の提唱我々はターゲットを絞って、いかにスポーツをやってもらうかを考えています。ビジネスパーソンは忙しい、ではどうしたらよいか。そこで、例えば、1駅手前で降りて職場まで歩いてもらう、というように通勤時間や休憩時間を活用して、生活の中にスポーツを取り込む「スポーツ・イン・ライフ」を提唱しています。あるいはスポーツを前面に出さずに、「健康とスポーツ」「ITとスポーツ」「観光とスポーツ」「ファッション・エンタメ・文化芸術とスポーツ」などと異なるジャンルから入り結果的に体を動かすことで、これまでスポーツに関わってこなかった方々も親しめるスタイルを提案しています。ここでビジネスパーソン向けの取組例を紹介します。まずは「あさ活」の事例として、国立代々木競技場内水泳場があります。この水泳場の従来の営業時間は午前10時からでしたが、これを午前7時に繰り上げたところ、たくさんの人が集まりました。ひと泳ぎしてから、ひとスポーツしてから仕事に向かう人が増えているのです。こうした取組を全国展開していきたいと考えています。また、私は朝にジョギングかウォーキングをしていますが、できない場合には、スポーツ庁が入るビルの13階まで階段を登って登庁しています。このほか、早く仕事を始めて早く終わり、その後みんなで皇居の周りを走る、あるいは空手の形を練習するなどして汗を流す「ゆう活」も推奨しています。今は数多くの競技がありますので、皆さんも仕事後のスポーツとして興味のあるものが必ず見つかるはずです。●「FUN+WALK」プロジェクト我々は「FUN+WALK」というプロジェクトを昨年春から実施しています。「1日8,000歩歩きましょう」というものです。1日8,000歩ぐらいを歩くことで大体の生活習慣病を防ぐことができるということが医学論文に書かれています。自治体単位では歩くことによる医療費抑制の実証事例もありますが、これを全国展開できるようにすることが我々の課題です。髙島屋やイオンモールにも協力していただき、ショッピングしながら知らず知らずのうちに5,000歩とか8,000歩を歩くことができた、という取組も行っています。●「スポーツ・エール・カンパニー」の認定また、従業員の健康を守ることが結果的に生産性向上につながる「健康経営」の考え方に基づき、従業員の健康増進のためにスポーツの積極的な取組を行っている企業を「スポーツ・エール・カンパニー」として認定(平成30年度347社認定)することも行っています。先日、サッカーの長友佑都選手がロート製薬の「スポーツ・エール・オフィサー(SYO)」就任挨拶のためスポーツ庁を訪問されました。ロート製薬は、昔からスポーツを奨励している企業ですが、今回、長友選手をSYOに任命することで、社員のスポーツマインドを更に高めていこうとしています。これは非常に良い取組です。●厚生労働省とスポーツ庁の連携会議また、昨年、スポーツを通じた健康増進のための厚生労働省とスポーツ庁の連携会議を立ち上げました。私が厚生労働省に「健康行政を手伝わせてください」とお願いして、ようやく実現しました。健康行政に関しては、我々スポーツ界がうまく関わることで更なる成果を上げることができると確信しています。 ファイナンス 2019 Apr.47職員トップセミナー 連載セミナー

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