ファイナンス 2019年4月号 Vol.55 No.1
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8フランス経済フランス経済は、2017年5月のマクロン政権発足後しばらく成長率は高めで推移し、9%台だった失業率は8%台に低下していたが、昨年に入り成長率は年初から鈍化、失業率低下は8.8%程度で足踏みする展開を見せていた。実は、(参考11)のとおり、昨年第3四半期には、一旦、設備投資・消費に回復が見られたが、黄色いベスト運動の影響で第4四半期はいずれも低調となった。一方、失業率は2018年第4四半期に久々に8.5%まで低下を見せたところである(失業率はいずれもフランス本土の値)。2019年のフランス経済は、黄色いベスト運動の影響をうまく脱出して昨年第3四半期のような設備投資・消費の回復がもたらされれば、昨年末決定の経済社会緊急対策に伴う景気刺激効果とあわせて経済成長率の回復が期待される。例えば、2018年の企業利益をフランスの主要株価指数であるCAC40の対象企業について見てみると2017年には及ばないまでもかなりの高水準であったし、家計について言えば黄色いベスト運動で悪影響を受けた消費や信頼感指数の反発が本年1月に既に見られている。こうした中で、昨年第4四半期に見られた失業率の低下が継続するかどうかは、経済成長と政治の安定にとって大きなカギである。また、6で述べたように、2019年は企業向けに特殊要因として単年度限りの大幅な負担減が生じる一方、2020年はそれがなくなり負担増要因となることから、本年中に経済成長の巡航スピードを取り戻せるかどうかが、マクロン大統領の政権運営の一つのポイントになるのではないかと思う。9終わりに発足後、矢継ぎ早に改革を行い、注目を集めたマクロン大統領であったが、黄色いベスト運動の発生・激化とそれに伴う支持率の低下により、その政策を継続できなくなり改革推進のモメンタムを失うのではないかという局面もあった。しかし、昨年12月の経済社(参考8)主な税制改正等の2018年及び2019年における影響額(単位:億ユーロ)2018年予算法等2019年予算法案等2019年予算法等住居税の減税(2018予算法:80%の世帯を対象に、2018年から3年間、毎年3分の1ずつ減額し、2020年に廃止)▲32▲38▲38超過勤務に対する所得に係る所得税の免除・社会保険料の免除▲6▲31金融所得(利子・配当・有価証券譲渡益)への単一税率30%の適用(2018予算法)▲16▲3▲3低所得退職者に対する一般社会税(CSG)減税▲3▲16一般社会税増税を財源とした失業保険料・健康保険料サラリーマン負担分廃止(2018予算法:2018年に一時的負担増、2019年にその影響剥落)44▲41▲41エネルギー転換のための税額控除の延長・見直し88不動産富裕税の創設(2018予算法:連帯富裕税を廃止して改組し、金融資産を対象から除外)▲32家事雇用(介助等)に係る税額控除の拡大(2017予算法:単純税額控除を給付付き税額控除化)▲10学生の社会保障負担削減(2018年3月8日法)▲2たばこ税増税(2018年社会保障予算法:2020年まで段階的に引き上げ10ユーロ/箱へ)(右の金額は増税に伴う需要減分を控除)644エネルギー税増税の家計影響分(2018年予算法)2419 対家計 影響額 計▲18▲60▲117競争力と雇用のための税額控除(CICE)の社会保険料軽減への転換(2018年予算法)(2018年分の税額控除と2019年分の社会保険料軽減が2019年に重複することによる一時的影響)▲204▲2042018年予算より前のCICEの制度改正による影響▲37▲5▲5法人税率の段階的引下げ(2018年予算法:33.33%(現行)→31%(2019年)→25%(2022年))※売上高2.5億ユーロ超法人について2019年は33.33%のままとする改正法案を3月に議会に提出済▲12▲24▲7法人税の予定納税制度における5回目(最終回)納付額の増額による一時的影響1515従業員50人未満の企業の、雇用主の利益分配制度固定負担の廃止▲5▲5法人臨時増税(2017年第1次補正予算法:配当3%課税の還付とそのための大規模企業への臨時増税)▲5122エネルギー税増税の企業影響分(2018年予算法)1310特定の軽油使用者に対するエネルギー産品内国消費税の軽減税率廃止10デジタル事業課税 ※法案を3月に議会に提出済4能力投資計画の資金配分のためのフランス・コンペタンス(職業訓練機関)への割当資金の負担31313 対企業 影響額 計▲84▲188▲187影響額 計▲102▲248▲304(注)太字は(社会保障財政ではなく)国の財政に影響するもの。38 ファイナンス 2019 Apr.SPOT

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