ファイナンス 2019年4月号 Vol.55 No.1
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暖化対策の観点から、同税における炭素比例部分を2014年に設け、2030年までに二酸化炭素1トン当たりの課税を100ユーロまで引き上げることを目指しており、2018年の税制改正では大統領任期末の2022年までに1トン当たり86.2ユーロまで引き上げるべく5年連続の税率引上げを定め、増収額は2018年引上げ分だけでも37億ユーロ(約5,000億円)とかなりの額に上っていた。さらに、マクロン大統領の選挙公約では安い軽油の燃料税率をガソリンの燃料税率にあわせていくことも掲げられており、それに沿って、軽油の税率の引上げ幅はかなり大幅なものとなった。なお、軽油やガソリンの税率引上げ分に付加価値税20%分が上乗せされるため、実際の影響は税率引上げ分の2割増となることにも留意が必要である。この2割増の分まで含めると、5年間の税率引上げ幅は軽油1リットル当たりで40円、ガソリン1リットル当たりで20円に上ったが、2017年秋の議会審議段階では(元老院で2018年の増税は認めつつ2019年以降の増税を削除する修正はあったものの国民議会ではそれは通らず)環境対策のための政策であることもあって、それほど大きな問題となることはなかった。3フランス2019年予算法案フランスの2019年予算法案は、2018年9月24日、議会に提出された。政府の説明では、2018年予算が最も緊急な部分を取り扱ったのに対し、2019年予算法案は、財政再建、統治権力・エコロジー転換への投資、最も脆弱な人々に対する支援及び改革アプローチの加速といった点に関する政府の約束を確認するものとなったとしており、次の措置が盛り込まれていた。(参考4) 2019年予算法案・社会保障財政法案に盛り込まれた措置(注) 下線は12月の経済社会緊急対策等に伴いその後修正・改正されたもの又は改正案が議会に出されているもの、太線はその他の修正(減員)があったもの、波線は憲法院で違憲とされたものであり、留意が必要。(1)国民負担の軽減:住居税減税(▲38億ユーロ)、2018年予算で段階的引下げを行った失業保険料・健康保険料軽減措置の平年度化効果、超過勤務所得に対する社会保険料の免除(▲6億ユーロ)(2)労働の優遇・企業の魅力向上:若年者・失業者職業訓練(25億ユーロ)、低所得労働者向け手当(活動手当)引上げ(最低賃金水準の労働者で月額20ユーロ増)、弱者保護・就業対策に集中するため、社会的手当全体では2019・2020年を通じ引上げ率を0.3%に抑制、競争力・雇用税額控除(CICE)の社会保険料軽減への転換、法人税率引下げ(33.33%→31%、▲24億ユーロ。なお、2018年予算法で規定済)(3)国民の物理的・社会的保護:成年障がい者手当(AAH)引上げ、老齢最低保障手当(Minimum Vieillesse)引上げ、国防分野の予算・定員の増・司法分野の予算・定員の増・治安分野の予算・定員の増(4)未来への準備:軽油に係るエネルギー産品内国消費税軽減税率の原則廃止、低所得世帯のエネルギー購入を支援する「エネルギー小切手」の増額、研究・高等教育予算の増額(参考3)2018年予算法で定められていたエネルギー産品内国消費税率引上げ(1ℓ当たり)201720182019202020212022軽油0.5442€(70.75円)0.6075€(78.98円)0.6611€(85.94円)0.7147€(92.91円)0.7682€(99.87円)0.7958€(103.45円)(毎年の引上げ幅、付加価値税の影響分含む)0.0391€(5.09円)0.0760€(9.87円)0.0643€(8.36円)0.0643€(8.36円)0.0642€(8.35円)0.0331€(4.31円)ガソリン(レギュラー)0.6380€(82.94円)0.6702€(87.13円)0.6940€(90.22円)0.7178€(93.31円)0.7416€(96.41円)0.7653€(99.49円)(毎年の引上げ幅、付加価値税の影響分含む)0.0114€(1.48円)0.0386€(5.02円)0.0286€(3.71円)0.0286€(3.71円)0.0286€(3.71円)0.0284€(3.70円)ガソリン(ハイオク)0.6580€(85.54円)0.6902€(89.73円)0.7140€(92.82円)0.7378€(95.91円)0.7616€(99.01円)0.7853€(102.09円)(毎年の引上げ幅、付加価値税の影響分含む)0.0114€(1.48円)0.0386€(5.02円)0.0286€(3.71円)0.0286€(3.71円)0.0286€(3.71円)0.0284€(3.70円)(注1)1ユーロ=130円で換算。「毎年の引上げ幅」には税率引上げ分に対する付加価値税(20%)上昇分も含む。税率は地域圏議会の追加課税分を含むイル=ド=フランス及びコルスを除く地域の税率。なお、2017年の税率(斜字)はオランド政権下で法制化されたもの。また、2019年以降の税率は2019年予算法により削除されている(後述)。(注2)日本の場合、ガソリンに対しては1ℓ当たり56.6円(石油石炭税2.8円、揮発油税48.6円、地方揮発油税5.2円)が、軽油に対しては1ℓ当たり34.9円(石油石炭税2.8円、軽油引取税32.1円)が、燃料課税として課税されている。32 ファイナンス 2019 Apr.SPOT

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