ファイナンス 2019年4月号 Vol.55 No.1
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1. 防衛大綱の見直し及び新中期防の策定我が国の防衛力整備は、長期的な防衛力水準の在り方を示す「防衛計画の大綱(以下「防衛大綱」)」の下で、5年間に亘る主要装備品を含む防衛力の整備計画を示す「中期防衛力整備計画(以下「中期防」)」に沿って継続的・計画的に実施されてきた。平成30年は、前防衛大綱の下で中期防を策定する年であったが、現在、我が国を取り巻く安全保障環境は、極めて早いスピードで変化し、特に、国際社会のパワーバランスの変化は加速化・複雑化し、既存の秩序をめぐる不確実性は増大している。また、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の利用の急速な拡大は、これまでの国家の安全保障の在り方を根本から変えようとしている。こうした中でも、我が国に対する脅威が実現し、国民の命と平和な暮らしを脅かすことを防ぐためには、安全保障の現実に正面から向き合い、従来の延長線上ではない真に実効的な防衛力を構築するため、従来とは抜本的に異なる速度で変革を図っていく必要があることから、今回初めて国家安全保障会議及び国家安全保障局の主導のもと、防衛大綱自体を見直すとともに、これに基づき新たに中期防を策定するに至った。*12.新防衛大綱(1)基本方針我が国は、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国*1) おおむね10年程度にわたる我が国の防衛の在り方について、新たな指針として定められた「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成30年12月18日国家安全保障会議及び閣議決定)を踏まえ、その当初5年間である平成35年度までの具体的な防衛力整備の計画として、「中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)について」(平成30年12月18日国家安全保障会議及び閣議決定)が定められた。中期防は、主要装備品の整備規模、所要経費などを定めている。に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本方針に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守っている。また平成25年の国家安全保障戦略の策定以降、積極的平和主義の観点から、我が国自身の外交力、防衛力等を強化し、日米同盟を基軸として、各国との協力関係の拡大・進化を進めてきた。今後とも、我が国は、こうした基本方針等の下で、平和国家としての歩みを変えることなく、その上で、現在の安全保障環境の中でも、国益を守る必要があることから、これまで以上に多様な取組を積極的かつ戦略的に推進していくこととなる。(2)防衛力の強化厳しさを増す安全保障環境の中で、軍事力の質・量に優れた脅威に対する実効的な抑止及び対処を可能とするためには、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域と陸・海・空という従来の領域の組合せによる戦闘様相に適応することが死活的に重要になるため、今後の防衛力については、個別の領域における能力を有機的に融合し、その相乗効果により全体としての能力を増幅させる領域横断(クロス・ドメイン)作戦が必要である。また、不確実性を増す安全保障環境の中では、平時から有事までのあらゆる段階における活動をシームレスに実施できることが重要であり、各種活動の持続性・強靭性を支える能力の質及び量を強化しつつ、平素から、事態の特性に応じた柔軟かつ戦略的な活動を常時継続的に実施可能でなければならない。今後、我が国新防衛大綱・新中期防と 平成31年度防衛関係費について主計局主計官 内野 洋次郎20 ファイナンス 2019 Apr.特 集

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