ファイナンス 2019年4月号 Vol.55 No.1
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1. 31年度農林水産関係予算の基本的考え方平成31年度の農林水産関係予算については、「平成31年度予算の編成等に関する建議」(平成30年11月20日財政制度等審議会)における指摘、「農林水産業の競争力強化に照らして予算が効果的・効率的なものになっているかどうか検証しつつ、厳しい財政事情を考慮して大胆なメリハリ付けをすること」を基本方針として編成を行い、総額2兆3,108億円と対前年度比+86億円(+0.4%)となった。予算の内容は、農林水産業の生産性を向上させ成長産業化した強い農林水産業を実現することに重点化している。それによって、食料の安定供給の確保などの多面的機能も発揮できることが望ましく、(1)強い農業のための基盤づくりと担い手への農地集積・集約化、(2)水田フル活用と経営所得安定対策の着実な実施、(3)輸出力強化と高付加価値化、といった取組みを総合的に進めるものとしている。また、平成31年度予算では、70年ぶりの漁業法改正など水産改革の進展に対し、これを後押しするために水産予算を増額している。水産改革においては、我が国の水産業が直面している漁業生産量の減少、漁業就業者の減少や高齢化、漁船の高船齢化等の問題に対応するため、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立し、漁業者の所得向上と年齢バランスのとれた漁業就業構造の確立を目指した改革を行うこととされた。予算においても、このような水産改革を後押しすることとし、漁業の構造改革や生産性向上に資する取組みに重点化を行っている。農地の集積・集約化については、「農地中間管理事業の推進に関する法律」(平成25年法律第101号)の施行から5年経過後の見直しの機会であった。農家の高齢化が進展し、リタイアにより自然と農地が貸し出されるなど、農地の出し手への協力金の追加的なインセンティブ効果が薄くなってきている状況を踏まえ、農地の出し手への支援から、集約化する地域の農業への支援(農地の受け手への支援)に重点化することとした。その際、農地の集積・集約化をより一層効果的・効率的に推進するため、農地の集約・集積化計画を含む人・農地プランの策定を協力金交付の要件とした。米政策については、平成30年産から、生産数量目標の配分が廃止され、農家自らが作物の種類及び作付面積を決定するという新たな環境に移行した。農家が自らの判断でニーズに合った生産をすることが望まれているが、水田活用の直接支払交付金については、建議において、「農家の作物選択に大きな歪みを与えるものとなっていることから、交付金の政策目的を再考するとともに、交付金の制度設計の在り方を検討すべき」と指摘されている。31年度予算においては、野菜などの高収益作物への転換が促進されるようインセンティブ措置を見直しているが、交付金の基本的な制度設計の在り方等については、今後も引き続き検討していく必要がある。2.主な施策の概要以下、31年度予算の主な施策の概要を紹介する。(1)水産改革70年ぶりの漁業法改正を含む抜本的な水産改革として、IQ(漁獲量の個別割当)といった先進的な資源管理の導入に向けた水産資源調査・評価の充実、漁業の平成31年度 農林水産関係予算について主計局主計官 森田 稔12 ファイナンス 2019 Apr.特 集

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