ファイナンス 2019年3月号 Vol.54 No.12
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各地の話題「九州の小京都」と呼ばれ、美しい武家屋敷を中心とした町並みが残っている「飫肥」という地域があります。ここは、九州初の伝統的建造物群保存地区にも選定され、南九州の武家文化が色濃く残っている、年間約20万人の観光客が訪れる観光地です。写真2 城下町 飫肥しかしながら、高齢化や過疎化等により、空き家が増え、美しい町並みが失われつつあります。このため、飫肥地区の再生事業として、平成27年度、全国に「まちなみ再生コーディネーター」を公募し、木藤氏、田鹿氏に続く3人目の民間人として登用したのが、Kiraku Japan合同会社の徳永煌季氏(現在は個人との契約)でありました。この事業の特徴的なものは、1人目の民間人として商店街再生を手がけた、木藤氏と同じく、単に行政からコンサルティングを依頼するのではなく、実際に専任の担当者として、現地に移り住んで事業を進めることであります。徳永氏は、平成27年8月に着任してから平成29年4月25日には、1億円近くの民間資金の調達を実現させ、武家屋敷の古民家を再生した1日1組限定貸切の高級宿泊施設「季楽飫肥勝目邸・合屋邸」の2棟同時オープンに至っています。開館以来、平均稼働率は5割、約1,000名以上の宿泊客が滞在されており、景観の保持と賑わいの創出につながっています。このように、財政状況が厳しい市の財源に頼らず、民間の資金を調達し、短期間で事業の成果を上げることができたことから、市民の期待度や注目度も高まっているところです。その他の再生事業として都市部の企業のサテライトオフィスとして空き家を再生し、企業誘致による雇用創出も促進しています。5地域おこし企業人交流プログラム本市は、株式会社乃村工藝社(本社:東京都港区)と平成29年1月28日に、日南市の掲げるコンセプト「創客創人」に沿ったまちづくりの実現に向けて、包括的連携協定を締結し、企業と連携したまちなみ再生を進めています。さらに、平成30年10月9日には「地域おこし企業人」の派遣協定を株式会社乃村工藝社と締結し、空間プロデュースを手がけるクリエイティブ人財である、山野恭稔氏を派遣していただき、飫肥城下町の建造物群利活用に関する企画などまちづくりに関する企画支援を担っていただいています。民間企業の知識やノウハウを活かし、地域独自の魅力や価値の向上等につながる取り組みを実施することで、魅力的なまちづくりを実現していきたいと考えています。新しい価値を見出すまちづくりを応援します!地方創生コンシェルジュ九州財務局宮崎財務事務所長 三原 健日南市は宮崎県の南部の海沿いに位置する風光明媚な観光地であるが、県内でも特に人口減少が顕著。日南市の特徴的な取組は、街づくりやマーケティングの優秀な民間の専門家を公募で集め、民間ビジネスのノウハウやスピードを有効活用しながら、ものごとをまとめ上げる能力や地元からの信頼度の強い官がチームを組んで、官民が強みと弱みを相互補完しながら一緒に進めていくことにある。若きリーダー﨑田市長は「民間人のマーケティング専門官は、企業と市役所を結ぶ通訳であり、コーディネーターのような存在」だと語る。進出企業数や新規雇用数は増加に転じ、若年者の転出は減少傾向にある。改革の芽は確実に出始めており、日南市の民間主導による地方創生の取組に目が離せない。写真3 宿泊施設に再生された「勝目邸」 ファイナンス 2019 Mar.71連 載 ■ 各地の話題

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