ファイナンス 2019年3月号 Vol.54 No.12
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担たん たん めん々麺つるや【新橋】これぞ、ザ・穴場店! 新橋駅烏森口から徒歩2分のビル3Fに超実力店が降臨「その存在を見逃していたことは、不覚としか言いようがない」。カウンター席で対峙した丼から麺をつかみ取りズズっと啜り上げた瞬間、猛烈な恥じらいの感情がこみ上げた。紛れもない。ここまでハイレベルな店が誕生していたことを看過していた自らの不勉強に対する羞恥の情だ。その店の名は『担々麺つるや』。同店は、昨年10月25日に産声を上げていた。言い訳するつもりはないが、ロケーションは、多数の飲食店が軒を連ねる新橋2丁目~4丁目界隈の路地裏。こぢんまりとしたビルの3階にひっそりと佇む店舗は、現場を通り掛かったとしても見過ごしてしまうほど目立たない。同店が提供する麺メニューは、屋号が示すとおり「担々麺」と「汁無し担々麺」の2種類。先般、人手が足りずに閉店した赤坂の人気店『東京麻婆食堂』の移転リニューアルであり、現在は、店主がワンオペで厨房を切り盛り。私が足を運んだ本年1月時点で、既にしっかりと固定客を確保できているようで、キビキビと無駄のないオペレーションを遂行しながらも、お客さんへの配慮を欠かさない店主の姿が印象的だった。いずれのメニューも甲乙が付けがたい水準の高さを誇るが、本場(中国四川省)の味わいを堪能したいのであれば、発祥時の原型をとどめた「汁無し担々麺」が鉄板チョイスだろう。注文時に、辛さのランクを「控えめ」「普通」「辛め」の三段階から指定することが可能。(初訪問時には「普通」がオススメ)いずれの辛さランクにおいても、味蕾を突き刺す「辣(唐辛子&ラー油)」の辛みと、電流のようにピリリと痺れる「麻(花山椒)」の辛みが口内で真正面からぶつかり交錯。幾ばくかの間隙を経て、いずれか一方だけでは辿り着けない「辛ウマ」の極致へと至る、ダイナミズムに満ちあふれた味構成。日本式担々麺においてデフォルメされがちなゴマの甘みを敢えて脇へと退かせ、香辛料でしか表現し得ない「辛みの中に潜む甘み」を演出する、高い粘度を確保しながらも、軽妙な食べ口を実現するなど、センスの良さもキラリ。優秀なのは担々ソースだけではない。ソースとタッグを組ませる麺も、モッチリした食感と滑らかな麺肌とが相まって、食べ手に揺るぎのない好印象を刻む逸品。いずれのパーツも驚くほど緻密かつ丁寧に作り込まれ、互いの持ち味を引き立て補完する。ちょっとした切っ掛けさえあれば、一気にブレイクする可能性を秘めた期待の新鋭。足を運ぶのであれば、今が絶好のチャンスだ。(店舗情報)住所:港区新橋3-22-2 3F電話番号:-営業時間:11:30~15:00、17:30~20:30定休日:土曜・日曜・祝日プロフィールラーメン探究家 かずあっきぃ(田中 一明)1972年11月生まれ。学生時代に出逢った1杯のラーメンに感銘を受け、1995年より本格的な食べ歩きに着手。「ラーメンの魅力の探究」をライフワークとし、年間700杯以上のラーメンをコンスタントに実食。総食杯数は12,000杯を超える。日本全国のラーメン事情に通暁し、各種媒体にラーメン情報を精力的に発信。 ファイナンス 2019 Mar.69かずあっきぃのラーメン探訪記連 載 ■ かずあっきぃのラーメン探訪記

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