ファイナンス 2019年3月号 Vol.54 No.12
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過去の「シリーズ日本経済を考える」については、財務総合政策研究所ホームページに掲載しています。http://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/index.html「貿易・国際物流ワークショップ」を開催シリーズ日本経済を考える872018年12月13日、財務総合政策研究所は、株式会社日通総合研究所との共催により、「貿易・国際物流ワークショップ」を開催した。以下、ワークショップの模様をお届けする。1.ワークショップの概要今回のワークショップは、多発する災害や保護主義、デジタル技術の急速な進展などにより、貿易や物流を巡る国際情勢が刻々と変化している中で、財務総合政策研究所においてもこの分野の知見の蓄積と底上げを図らなければならないという問題意識から、貿易と国際物流をテーマに有識者を交えて開催されたものである。会場は財務省4階の会議室。12月13日午後の半日をかけて、同分野を幅広くカバーする発表及び講演が行われた。財務総合政策研究所からは、水尾主任研究官より貿易と人工知能について、柴田・森研究員より震災と貿易・物流について研究成果を発表。また、株式会社日通総合研究所の田阪リサーチフェローから欧米の保護主義政策と物流について、政策研究大学院大学の長瀬客員教授からグローバルバリューチェーンと自動車の貿易について、株式会社NTTデータの赤羽部長からブロックチェーンの貿易分野への応用について講演が行われた。当日は、バックベンチを含め総計で100名近い省内外の聴講者が来場し、活発な意見交換が行われた。次章で各発表・講演の内容についてレポートする。(プログラム)熊本地震における物流企業から見た 救援物資輸送財務総合政策研究所研究員 柴田愛東日本大震災が非被災地域の自動車 輸出に与えた影響財務総合政策研究所研究員 森泰二郎欧米の保護主義的通商政策がグローバル・ロジスティクスに与える影響株式会社日通総合研究所 リサーチフェロー 田阪幹雄グローバルバリューチェーンと自動車及びその部分品・附属品の貿易政策研究大学院大学客員教授 長瀬透AI(人工知能)の貿易業務への応用事例財務総合政策研究所主任研究官 水尾佑希広がるブロックチェーン活用 ~貿易分野への適用に見る課題と展望~株式会社NTTデータ金融事業推進部 デジタル戦略推進部部長 赤羽喜治2.各発表の概要2.1. 熊本地震における物流企業から見た救援物資輸送(発表者:財務総合政策研究所研究員 柴田愛)熊本地震では発災後数日間、政府調達物資が市町村避難所に届かない事態が発生した。その原因を当時の状況のヒアリングをもとに、TOC理論の手法で検証する。まず政府調達物資と指定公共機関について説明する。政府調達物資とは、災害時に市町村、県の備蓄物資が不足した際に大きな役割を果たす救援物資である。政府が全国の関係団体、関係事業者から集めた物資は、広域物資輸送拠点、市町村集積所を経由して、市町村避難所に届けられる。政府調達物資を広域物資輸送拠点まで届ける一次輸送を行うのがトラック事業者指定公共機関の主な役割である。指定公共機関とは災害対策基本法に基づき、民間企業の中で指定された機関である。従来は日本通運株式会社が指定されていたが、東日本大震災という未曾有の被害の発生以降、財務総合政策研究所 主任研究官水尾 佑希研究員柴田 愛研究員森 泰二郎62 ファイナンス 2019 Mar.連 載 ■ 日本経済を考える

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