ファイナンス 2019年3月号 Vol.54 No.12
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巻頭言「財政再建は 心の再建である」財務大臣政務官渡辺 美知太郎「予算は有限、欲望は無限。(国の)予算は人間の欲望に繋がるものであるから、心のあり方、持ち方というものを真剣に考えなければならない。なんでも金でかたがつく、金で幸せが買えるという風潮が世の中を歪めているし、また財政を歪めているのだ。財政再建というのは、心の再建に他ならない。」これは私の祖父、渡辺美智雄が大蔵大臣であった時に残した言葉です。私は昭和57年、祖父が大蔵大臣であった時に生まれました。祖母が、大蔵大臣の「蔵」をとって名前は「美智蔵(みちぞう)」でどうか、と父に提案したという話も聞いています。私が誕生した頃は、実質経済成長率が3.4%、合計特殊出生率が1.77と、今よりずっと高い数値でしたが、オイルショックを受けて、昭和50年に戦後2回目の赤字国債を発行して以降、日本の財政は借金体質となります。祖父も財政再建の必要性を感じ、各地で説いていたそうです。祖父は数多くの額字を書いていますが、「財政再建」と書いた額字も存在しています。そのため、(「美智蔵」にはなれませんでしたが、)昨年10月に財務大臣政務官を拝命した時はご縁を感じました。拝命してまだ4か月ほどですが、この短い間に、予算編成や税制改正等、様々な政策決定を経験させて頂きました。私にとって、政府の一員として仕事をするのは初めてであり、責任の重さを感じながら、日々職務に当たっています。特に印象を受けたのは、財務省が1年を通じて取り組む仕事が、「国づくり」そのものだということです。例えば、予算編成。ある部屋では、いまや34兆円規模となった社会保障費の未来を考えている。別の部屋では、公共事業をどうしていくか、頭をひねる。その向かいの部屋では、復興庁などが抱える施策に知恵を絞る…。この政策のレンジの広さには、本当に驚きます。税も然りです。さらに、市場と対話を続けながら国債発行計画を作る部署、初めて日本で開催するG20の準備に当たる部署もあります。高層ビルが乱立する霞が関で、外から見ればそんなに大きくない財務省ですが、扱っている業務の幅はどこよりも広いと思います。そのためには、この国の隅々にまで目を配り、全てにおいて最善の答えを探し続けなければなりません。もっとも、旧来私が財務省に持っていた印象は、今とは違ったものでした。野党にいた頃は、財務省はラスボスのような存在。質問取り一つをとっても、手強い相手でした。そんな省庁に、今度は政務官として飛び込む。最初は緊張もしましたが、職員の一人一人はみな誠実であり、人付き合いを大切にしながら走り回って汗をかいている姿を見て、自分が持っていた印象が全くの誤解であったことが分かりました。平成最後の予算編成は、特に重要な意味を持つものでした。本年10月には、消費税率10%への引き上げを控えています。31年度予算案には、「臨時・特別の措置」が盛り込まれました。前回の消費増税時に景気の回復力が弱まった反省から、二度と同じことは繰り返さないという強い決心を感じます。目的達成のため、昼夜を問わず働いている財務省の皆さんに心から敬意を表します。財政再建は、心の再建です。最後に、祖父が財政再建のための増税について、国民に理解を求めた際に述べた言葉を紹介します。「内心好きだと思っている相手でも、突如として『今晩結婚しよう』と言われたら、『キャー』というよ。ムードも必要ではないのか。理解してもらうには。」より多くの国民の方々に財政再建の必要性についてご理解をいただけるよう、私も最後の最後まで尽力して参ります。ファイナンス 2019 Mar.1財務省広報誌「ファイナンス」はこちらからご覧いただけます。

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