ファイナンス 2019年3月号 Vol.54 No.12
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た799億円(年度調整分)を除く3,250億円を震災復興特別交付税として計上し、東日本大震災からの復旧・復興への対応に万全を期すこととしている。なお、この震災復興特別交付税の財源は、全額、東日本大震災復興特別会計から交付税特会に繰り入れられることとされている(返還金4億円を除く)。(2)全国防災事業全国防災事業(全国的に直轄・補助事業として行われる緊急防災・減災事業)の地方負担分は、個人住民税の均等割の標準税率の10年間の引上げといった地方税における時限的な税制措置などの地方負担で賄うこととしており、この事業費と財源については通常収支分と別に整理されている*16。当該事業の実施は平成27年度で終了し、平成28年度以降は、これまでの全国防災事業に伴って発行した地方債の元利償還金(公債費)及びこれに充当する歳入のみの計上が行われている。平成31年度の公債費は1,058億円(対前年度+23億円)となっており、これを時限的な税制措置による地方税収745億円(対前年度+17億円)と、通常収支分からの充当312億円等で賄うこととしている。5.おわりに以上のとおり、平成31年度地方財政対策は、地方一般財源総額を前年度と実質的に同水準としつつ、臨時財政対策債の発行を大幅に縮減するなど、地方財政の健全化を大きく進める内容となった。今後も国・地方を通じた財政健全化を更に進めるためには、平成32年度以降も「地方一般財源総額実質同水準ルール」を堅持していく必要がある。そのためには、地方財政計画に計上された事業の実績や効果について検証し、真に必要な水準の財源保障としていくことが不可欠であり、このためにも、地方財政計画と決算の対応関係や基金の増減*17理由等の「見える化」を進め、PDCAサイクルを機能させていかなければならない。*16) なお、地方単独事業分については、平成24年度までは全国防災事業として実施されていたが、平成25年度以降、通常収支において緊急防災・減災事業費として計上している。*17) 地方団体の基金のうち、年度間の財源の不均衡を調整するための「財政調整基金」の残高は平成29年度に対前年度▲1,150億円となっている。また、平成30年度から都道府県が国民健康保険の財政運営の責任主体となることに伴い、平成29年度に国費を財源として都道府県が積み立てた国民健康保険財政安定化基金の増加分(全都道府県で1,911億円)を除けば、東京都及び特別区以外の地方団体の基金残高は対前年度▲444億円となっている。これに加え、同ルールの堅持のためには、増嵩を続ける一般行政経費・補助事業の伸び、すなわち社会保障費の伸びを抑制していくことが不可欠である。それぞれの地方団体は住民生活に密接に関連した行政サービスを提供しており、本来は、財政状況がサービスの質の水準につながることで、より財政規律が働くことが期待されている。したがって、社会保障関係の補助事業に係る経費は国が決定する制度に伴って発生するものではあるが、社会保障費の抑制のためには、地方が国とともに主体的に取り組むことが今後増々重要になると考えられる。 ファイナンス 2019 Mar.21平成31年度予算特集:2平成31年度地方財政対策について 特集

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