ファイナンス 2019年3月号 Vol.54 No.12
22/80

(2)地方の歳入の見込みA) 地方税収等平成31年度は内需を中心とした景気回復が見込まれる*5中、地方の税収等(地方税収及び地方譲与税収の合計額)は対前年度+8,708億円の42兆8,756億円が見込まれている*6。これは過去最高の水準である。B) 地方特例交付金等地方特例交付金等とは、国の制度変更等により、地方負担の増や地方の減収が生じた場合などに、特例的に交付される交付金であるが、平成31年度においては、対前年度+2,796億円の4,340億円が計上されている。その内訳は、従前からの住宅ローン減税による個人住民税の減収を補填するための交付金1,742億円に加え、幼児教育・保育の無償化に係る初年度の経費全額を国負担とするための交付金2,349億円、自動車課税の臨時的な軽減による減収を補填するための交付金249億円である。平成31年10月から実施される幼児教育・保育の無償化については、その費用負担等が論点となった。国と地方の協議の結果、平成31年度は消費税率引上げに伴う地方の増収が僅かであることから、新たに「子ども・子育て支援臨時交付金」(仮称)を創設し、平成31年度に限って、幼児教育・保育の無償化に係る地方負担分を国費で補填することとなった。なお、同交付金の使途は子ども・子育て支援給付及び地域子ども・子育て支援事業に要する経費に限定されており、国の一般会計予算総則において、消費税の収入が充てられる経費として整理されている。また、自動車課税については、消費税率引上げに伴う需要の平準化のため、平成31年10月から平成32年9月末までの間、自動車税(道府県税)及び軽自動車税(市町村税)の環境性能割の税率を1%分軽減することとなった。これに伴う地方の減収については地方特例*5) 「平成31年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(平成31年1月28日閣議決定)。*6) なお、地方法人課税の偏在是正のため、平成31年度税制改正において、法人事業税の一部を分離して特別法人事業税(仮称)(国税)を創設し、その税収を特別法人事業譲与税(仮称)として都道府県に譲与することとなっている。これについては、譲与開始時期が平成32年度とされていることなどから、平成31年度地方財政対策には影響しない。*7) この他、消費率引上げに対応して、平成31年10月から平成32年12月末までの間の住宅ローンについて減税措置が拡充されており、これに伴う個人住民税の減収についても従来と同様、地方特例交付金で補填することとなっている。ただしこの措置は、減税対象期間を10年から3年間延長し、その延長した期間において最大、建物購入価格の消費税2%分を減税するものであるため、当分は地方の減収が発生しない。*8) この中には、平成29年度税制改正における配偶者控除等の見直しによる個人住民税の減税額を補填するための172億円が含まれている。また、地方税収等の状況を踏まえ、従来のスケジュールの見直しを行い、加算の一部を将来に先送りしている。*9) これに地方特例交付金等4,340億円を加えた15兆9,850億円(対前年度+4,701億円)が、入口ベースの地方交付税交付金「等」である。交付金により国が全額補填することとなっている*7。C) その他の地方歳入国庫支出金(補助事業の実施のため国が地方団体に交付する補助金等)については、対前年度+1兆662億円の14兆7,174億円が計上されている。これは、幼児教育・保育の無償化や社会保障の充実等の社会保障に係る経費の国負担分や、「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」に伴う補助金等を反映したものである。地方債(臨時財政対策債を除く)については、平成31年度の発行額は対前年度+9,393億円の6兆1,714億円となっている。「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」に係る経費の地方負担分や、地方単独事業である「緊急自然災害防止対策事業費」については全額地方債で賄うこととしており、これらを反映したものである。これらの他、使用料及び手数料として1兆6,083億円(対前年度▲8億円)、雑収入として4兆3,887億円(対前年度+997億円)などが計上されている。(3)地方交付税交付金・地方一般財源総額以上の地方歳出・歳入の見通しを踏まえた地方交付税交付金については、まず、国の税収見込みの増加に伴い、国税の一定割合に当たる分(法定率分)が対前年度+6,294億円の15兆5,232億円となっている。これに過去の地方財政対策における国と地方の貸し借りなどに起因する法定加算等2,633億円(対前年度▲2,734億円)*8を加え、過年度の精算に伴う2,355億円(対前年度同額)を減じた15兆5,510億円(対前年度+1,904億円)が、国の一般会計からの地方交付税交付金となっている(いわゆる入口ベース)*9。特筆すべきは、地方税収や上記の地方交付税法定率分の増加などを踏まえ、国と地方が折半して補填して18 ファイナンス 2019 Mar.特集

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る