ファイナンス 2019年3月号 Vol.54 No.12
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質的に同水準を確保するとされている(「地方一般財源総額実質同水準ルール」)。この「地方一般財源総額実質同水準ルール」の下、地方財政計画における一般財源総額は平成23年度以降、不交付団体の水準超経費*2や消費税率の引上げに伴う社会保障の充実に相当する分等を除いて、同水準で維持されてきている。この間、景気動向や消費税率の引上げにより地方税収等の増加が続き、地方財政計画における歳出歳入ギャップが縮小してきた結果、地方交付税交付金等*3及び臨時財政対策債の新規発行が減少してきているところである。2. 平成31年度地方財政対策の概要 について(1)「新経済・財政再生計画」等の方針政府は平成30年6月15日に「新経済・財政再生計画」を含む「経済財政運営と改革の基本方針2018」を閣議決定し、平成37年度(2025年度)の国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指す旨を掲げた。この財政健全化目標の実現に向けて、「地方の歳出水準については、国の一般歳出の取組と基調を合わせつつ、交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源の総額について、2018年度地方*2) 不交付団体の基準財政収入が基準財政需要を超過する額の見込み。不交付団体の税収増に伴って交付団体の財源(地方交付税)が減少しないよう、地方財政計画の歳出に計上されている。*3) 地方交付税交付金と地方特例交付金等を合わせたもの。財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する」とし、「地方一般財源総額実質同水準ルール」を引き続き今後3年間維持することとした。「平成31年度予算編成の基本方針」(平成30年12月7日閣議決定)においては、「新経済・財政再生計画」の初年度の予算として、同計画に沿った予算編成を行い、「地方においても、国の取組と基調を合わせ徹底した見直しを進める」とされた。これに先立って取りまとめられた財政制度等審議会の「平成31年度予算の編成等に関する建議」においては、「国・地方を合わせた財政健全化目標を実現するためには、地方においても国と足並みを揃えて財政健全化に取り組んでいくことが不可欠である」とされている。平成31年度の地方財政対策は、こうした方針・提言に沿って策定されたものである。(2) 平成31年度地方財政対策のポイント平成31年度の地方財政対策においては、「新経済・財政再生計画」の初年度として、「地方一般財源総額実質同水準ルール」を堅持すべく、地方の歳出改革等を加速・拡大させつつ、幼児教育・保育の無償化や消費税率引上げに伴う需要の平準化、防災・減災、国土強靱化等の取組に対応することが主な課題となった。その結果、・ 地方の一般財源総額を前年度と実質的に同水準資料:平成31年度地方財政対策のポイント1.地方財政の健全化・国税収の伸び等に伴って、地方交付税交付金等(一般会計ベース)は16.0兆円(+0.5兆円)に増加・地方税収等は過去最高(42.9兆円(+0.9兆円))・この結果、(1)国と地方が折半で負担している財源不足を解消(平成20年度以来11年ぶり)(2)臨時財政対策債の発行を大幅に縮減(3.3兆円(▲0.7兆円))(3)交付税特会借入金の償還を増額(0.5兆円(+0.1兆円))2.地方一般財源総額の確保・一般財源総額(水準超経費(不交付団体の超過財源見合い歳出)を除く):60.7兆円(+0.4兆円)・一般財源総額(水準超経費を含む):62.7兆円(+0.6兆円)⇒前年度と実質的に同水準を確保3.消費税率引上げへの対応等・幼児教育無償化の円滑な実施のため、初年度に要する経費全額を国が負担▲「子ども・子育て支援臨時交付金」(仮称)を創設(約2,300億円)・自動車課税(環境性能割)の臨時的軽減による地方税の減収の補填(地方特例交付金:約250億円)4.防災・減災、国土強靭化への対応・地方団体が単独事業として実施する防災インフラの整備の推進▲「緊急自然災害防止対策事業費」を計上(3,000億円)16 ファイナンス 2019 Mar.特集

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