ファイナンス 2019年2月号 Vol.54 No.11
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コラム 海外経済の潮流119大臣官房総合政策課 海外経済調査係長 赤嶺 彰一Fed、FRB、連邦準備銀行、FOMC 及び短期金利との関係本稿では、FRBと一括りにされることがある米国の連邦準備制度(図1)について整理した後、それらと短期金利との関係を考えてみる。米国における中央銀行機能を持つ組織の総称は連邦準備制度(以下Fed*1)と呼ばれ、連邦準備制度理事会(以下FRB*2)と連邦準備銀行(以下連銀)で構成される。FRBは、大統領によって任命された議長・副議長を含む理事7名(現在2名空席)で構成されており、主に連邦準備銀行の監督やディスカウントレート変更の承認等を所管している。連銀は、全米50州を12地区に分割し、各管轄区において金融機関の監督・規制、決済システムの運営等を担当している。連邦公開市場委員会(以下FOMC*3)は、日本銀行の「金融政策決定会合」に相当し、FRB理事と連銀総裁が出席し、政策金利の誘導方針など金融政策の方針を決定する。以下では、連邦準備制度のなかで短期金利がどのように決定され、政策金利の誘導がなされているかを確認する。*1) Federal Reserve System*2) Federal Reserve Board*3) Federal Open Market Committee*4) 銀行間短期市場(日本のコール市場に相当)における取引金利のこと。通常は翌日物。*5) 原則2週間に1回及びFOMCの際に開催。ディスカウントレート会合議事録はFOMC議事録公表日の翌週の火曜日に公表されている。【(1)政策金利(FFレート)誘導目標】政策金利であるFFレート*4の誘導目標レンジはFOMCにおいて決定される(図2)。【(2)ディスカウントレート】一般に、中央銀行が政策金利を目標に誘導するにあたり、上限を構成するものとして、ディスカウントレートが利用されている。ディスカウントレートは、差し入れた適格担保の範囲内で中央銀行から借り入れを行う際に適用される金利であり、上限となる理由は通常借り手側は最後の貸し手(ラストリゾート)である中央銀行からの借入コストであるディスカウントレートを超える金利で資金調達を行わないと考えられるためである。Fedにおいて、このディスカウントレートは、各連銀がFRBに対し申請を行い、ディスカウントレート会合(Board of Governors discount rate meetings)をFRBが開催し*5、連銀の申請にFRBが承認を与えるという形となっている。【図1】連邦準備制度の仕組み連邦準備制度(Fed)連邦準備銀行連邦準備制度理事会(FRB)連邦公開市場委員会(FOMC)・理事7名(現在2名空席)で構成。・連邦準備銀行の監督や公定歩合変更の承認等を行う。・金融政策の基本的な方針を決定。・出席者は理事会理事(7名(現在2名空席))、地区連銀総裁(12名)の計19名(現在17名)。・12地区にあり、金融機関の監督・規制、決済システムの運営等を行う。【図2】(1)政策金利(FFレート)誘導目標0.000.501.001.502.002.503.003.5020152016201720182019(%)15/120.25~0.50%17/317/617/1218/3※日付は決定日ベース16/122018/12/192.25~2.50%18/618/9(出所)FRB60 ファイナンス 2019 Feb.連 載 ■ 海外経済の潮流

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