ファイナンス 2019年2月号 Vol.54 No.11
63/80

シニアと非正規雇用・シニアに非正規雇用が多い要因としては、企業の定年制度も関係している。定年時期を定めている企業のうち、定年時期を65歳未満としている企業の割合は約8割あり、多くの企業では定年退職したシニアを定年前とは異なる雇用形態で更新契約を行っていると指摘されている(図表7)。・また、シニアにとっての理想の仕事は健康面に配慮した割合が60歳未満と比べて高く、非正規雇用に従事する理由として、「自分の都合のよい時間に働きたいから」を挙げている人が多い。このため、シニアの中には、時間の柔軟性を確保しつつ収入を得るために、多様な働き方の選択肢として非正規雇用となっている人もいるだろう(図表8、9)。図表7 企業規模別定年時期0204060801001,000人以上平均300~999人100~299人30~99人(2017年調査、%)60歳61歳~64歳65歳以上図表8 シニアにとっての仕事の理想020406080100わからないその他高い収入が得られる失業の心配がない世の中のためになる健康を損なう心配がない自分の専門知識や能力がいかせる私生活とバランスがとれる自分にとって楽しい収入が安定している60歳以上60歳未満(2018年調査、%、複数回答)図表9 非正規雇用を選択した理由自分の都合のよい時間に働きたいから33.8%家計の補助・学費等を得たいから21.5%専門的な技能等をいかせるから12.3%正規の職員・従業員の仕事がないから9.2%その他23.2%(2017年調査、65歳以上)働き方の多様化と企業の対応・今後も増加が見込まれるシニア労働力の活用は重要だが、シニアの中にも体力差・能力差があり、また求める仕事内容等にも違いがあるため皆一律に対応することは難しく、企業は今まで以上に多様な働き方を受け入れる体制づくりが求められるだろう。・その中で、企業側もシニアの活用に課題を認識しており、現状では意欲のあるシニアに対して役割の変化・縮小、賃金の減少によるモチベーションの低下、将来では自社におけるポストの不足を挙げている(図表10)。・株式会社高島屋はこの様な課題の解決に意欲的に取り組んでいる企業の例だ。同社は社員が自らの価値観に応じて仕事ができるように6つのコースを用意し、再雇用を促進している(図表11)。労働市場の変化を踏まえ、今後は企業が多種多様な労働者を活用できる雇用環境を整備していくことに期待したい。図表10 配置・活躍推進にあたって生じている問題0102030405060特に問題は生じていない・生じる可能性はないその他出向・転職先のポストが不足これまで培ってきた経験・スキルが事業構造の変化等により陳腐化接続器(55~59歳)の時点におけるモチベーションの低下が高齢期(60~65歳)に影響自社組織の新陳代謝が低下自社において、活用する職務・ポストが不足再雇用後の処遇の低下・役割の変化等により、モチベーションが低下現在生じている問題今後(5年程度)生じる可能性のある問題(2015年調査、%、複数回答)図表11 企業の取組事例(株式会社高島屋)再雇用コースコース概要専門嘱託コース・専門分野のプロ(部長職以上)(MD・美術、法務・財務等)スーパーセールスコース・販売職・営業職のプロ・社員時にコース選択が必須条件技術・技能コース・特定の技術・技能で、組織に貢献※紳士服技術(誂)等キャリアコースマスターコース・販売・営業分野での専門性を発揮・フルタイム勤務レギュラーコース・販売職、営業職、事務職・フルタイム勤務シェアードコースアドバンスコース・販売職、営業職、事務職・年間1458時間(8割)の短時間勤務・55歳(社員時)に選択可能レギュラーコース・販売職、営業職、事務職・1週22.5時間勤務グループ内再就職支援コース・グループ企業にて業務に従事(定年時出向者、出向経験者等)(注)「シニア」の定義については、本稿を作成する上で使用した日本総研「人生100年時代の高年齢者雇用と企業年金」の定義を参考とした。(出典)内閣府「国民生活に関する世論調査」、厚生労働省「完全生命表」「簡易生命表」「就労条件総合調査」、総務省「国勢調査」「労働力調査」、日本経済団体連合会「中高齢従業員の活躍推進に関するアンケート調査結果」「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる現状・課題と取組」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2019 Feb.59コラム 経済トレンド 56連 載 ■ 経済トレンド

元のページ  ../index.html#63

このブックを見る