ファイナンス 2019年2月号 Vol.54 No.11
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こうしたなか、共助による除雪の担い手として相当の役割を果たしているのが、ボランティアです。国土交通省のホームページで全国の受け入れ窓口が掲載されていますが、新潟県では除雪ボランティア「スコップ」という取組を平成10年から行っています。登録ボランティアは約2,000人、県外の方が6割で、年齢も10代から70代と幅広いです。熟練ボランティアも参加しているので、雪かきが初めての人も参加でき、十数人で年間15回程度実施しています。私が参加した回では、初日の午後にレベル別の講習と2時間程度高齢者家屋の除雪作業、夕方に温泉に入り、登録有形文化財となっている古民家の宿泊施設で地元料理の懇親会というスケジュール。十数年にわたり参加しているメンバーも複数人いて、雪が好き、ボランティアが好き、人と交流するのが好きなど人によって動機は様々。翌朝はこれまた地元料理を頂き、2時間程度の除雪作業。新潟出身の私は多少除雪能力があるつもりでしたが、周りの方の上手いこと。自分がいかに力任せにパワーショベルを動かしていたかがわかりました。東京出身在住の方に、力を入れずに除雪する方法を教えてもらう不思議な感じ。チームみなでやるとどんどん雪の山が減っていき、家の壁や1階の窓が見えてくるので、とても達成感があります。また、除雪中に、2階の窓から家の方に声をかけてもらうと元気が湧いてきました。提供頂いたみかんやコーヒーなどを頂きながら会話したりと、あっという間の時間でした。通常の観光旅行よりもはるかに充実感を得られました。ただ、ボランティアの受け入れをするNPOや社会福祉協議会の調整事務はやはり大変なようで、除雪回数、ボランティアの数もまだまだ足りない状況です。こうした課題に対応するため、試みに、旅行会社を窓口にして、今年2月下旬に津南町で雪国体験ツアー(ジオパーク見学、火焔型土器体感、スノーシュー体験や酒造訪問等)と除雪ボランティアを組み合わせた企画を実施する予定です。雪国の好循環は?雪深い環境が、保存・発酵食文化などの特徴ある文化を生み、澄んだ雪解け水がコシヒカリや新潟清酒づくりを可能とし、さらに首都圏等に向けた水力発電の水源などになっています。ジャパン・ツーリズム・アワード大賞を獲得した雪国観光圏の取組や、国際的に人気の高まる大地の芸術祭の特長もこれまで何度か書かせて頂きました。スキー・スノボを楽しむために雪国に来る方は多いですし、春の田植えや秋の稲刈りで農村との交流を楽しむ方も増えています。ただ、そうした活動も、地域を熟知し受け入れる人がいるからこそ。急激な少子高齢化が進む中ですが、そうした交流の喜びや都会暮らしの癒しが一層増す形で、都市と中山間地域が持続可能な仕組みづくりを一歩でも前に進めたいなと思っています。まずは一度、雪国でスコップ握ってみませんか?<参考:除雪ボランティアの申込先>〇 国土交通省「除雪ボランティア」募集情報http://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/kokudoseisaku_chisei_fr_000016.html〇 新潟県除雪ボランティア「スコップ」http://www.pref.niigata.lg.jp/chiikiseisaku/yukivolunteer.html国登録有形文化財で宿泊除雪作業後のイノシシ鍋(夕食の一例) ファイナンス 2019 Feb.57ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?連 載 ■ ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?

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