ファイナンス 2019年2月号 Vol.54 No.11
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1.平成31年度予算の概要(1)平成31年度予算編成の背景と考え方平成31年度予算は、我が国経済及び社会が直面する現下の重要な課題に対応しつつ、我が国の目指す「経済の再生」と「財政の健全化」という2つの大きな課題の両立を実現するものとしている。すなわち、我が国の経済は、輸出がおおむね横ばいとなっているものの、企業収益が過去最高を記録する中で設備投資が増加するとともに、雇用・所得環境の改善により消費の持ち直しが続くなど、経済の好循環が進展する中で緩やかな回復が続いており、今回の景気回復は戦後最長と見られている。(参考)平成30年度の実質GDP成長率は0.9%程度、名目GDP成長率は0.9%程度と見込まれており、平成31年度はそれぞれ1.3%程度、2.4%程度と見込まれている。一方、財政に目を転じれば、国と地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも累増が見込まれ、また、国債費が毎年度の一般会計歳出総額の2割以上を占めるなど、引き続き、極めて厳しい状況にある。こうした状況の下で、引き続き、経済再生と財政健全化に着実に取り組んでいく必要があり、そうした中で、我が国としては、世界に類を見ないスピードで進む少子高齢化を克服していくため、全世代型社会保障制度を確立し、その持続可能性をしっかりと確保していくことが極めて重要である。こうした観点から、平成31年度予算については、○ 本年10月に予定される消費税率の引上げにより、安定的な財源を確保しつつ、それを活用して幼児教育・保育の無償化などの社会保障の充実を着実に進めていくこと、○ 消費税率引上げに伴う需要変動を平準化するために十分な支援策を講じることなど、消費税率引上げに向けた環境整備に万全を期し、経済の回復基調が持続するよう全力で取り組むこと、○ 2025年度の国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化に向け、「新経済・財政再生計画」に沿った歳出改革を着実に行っていくことが必要であり、「平成31年度予算編成の基本方針」(平成30年12月7日閣議決定)に沿って予算編成が進められた。(2)平成31年度予算のポイント平成31年度予算の具体的なポイントは以下の通りである。1) 本年10月に予定される消費税の増収分を活用し、全世代型の社会保障制度への転換に向けて、幼児教育・保育の無償化をはじめとする社会保障の充実のため、+7,157億円*1(国費ベース:以下同じ)を計上している。・幼児教育・保育の無償化〔2019年10月~〕+3,882億円*2・介護人材の処遇改善〔2019年10月~〕+213億円・年金生活者支援給付金の支給+1,859億円・低所得者高齢者の介護保険料の負担軽減強化+327億円など*1, 2 幼児教育・保育の無償化に係る初年度の経費を全額国負担とすることに伴う子ども・子育て支援臨時交付金(仮称)2,349億円が含まれており、これを除いた社会保障の充実に係る社会保障関係費の増はそれぞれ+4,808億円、+1,532億円となる。平成31年度予算及び 平成30年度第2次補正予算について主計局総務課主計官 寺岡 光博2 ファイナンス 2019 Feb.特集

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