ファイナンス 2019年2月号 Vol.54 No.11
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外債務返済額、公的債務総額を抑制すべく、基礎的財政収支赤字の解消*19や対外債務に関する借入、借換、償還のタイミング、通貨ごとの債務構成比、利率などを複合的に考慮して債務負担指標をできる限り抑制する(図1にあるような債務負担指標の山をなだらかにする)政策努力が求められる。なお、DSAで使われているマクロ経済の各部門(実体経済・財政・金融・国際収支)における諸指標は、主に、図2にあるようなマクロ経済勘定の連関を考慮したFPという枠組みの予測値に基づいている。FPは、edXというオンライン講座を提供するプラットフォームにて無料受講が可能となっており、詳しくは、脚注URL*20を参照されたい。*19) 含意については、ドーマー条件を参照されたい。*20) https://www.edx.org/school/imfx(2019年1月31日確認時点)*21) 2017CPIAは、以下のURLから閲覧可能(2019年1月31日確認時点)。 http://pubdocs.worldbank.org/en/574741531149275911/2017-CPIA-IDA.pdf*22) DSFの改定は、本節で簡単に触れた債務負担能力に関するもの以外にも数多くあり、詳細は、IMF(2018a)を参照されたい。3.2. DSFにおける債務負担能力及び債務負担閾値の設定これまでのDSFでは、世銀が作成しているCountry Policy and Institutional Assessment (CPIA)*21にのみ基づいて債務負担能力が決められ、それぞれの債務負担能力に応じた債務負担閾値の設定がされていた。CPIAは、IDA融資適格国を対象として、(i)経済運営、(ii)構造政策、(iii)社会的包摂/公正を実現するための政策、(iv)公共セクター運営と制度の4つのグループからなる16の基準に基づいて各国を1から6までの数値で採点している。国の総合得点は、IDA資金配分指標(IRAI)と呼ばれ、2017年のDSF改定*22までは、IRAIの得点によって各国の債務負担能力がWeak, Medium, Strongのいずれかに決められていた。図2:マクロ経済勘定の連関出所:IMF Financial Programming講義資料に基づき筆者作成実体経済国民経済計算(自国通貨、フロー)個人消費政府消費  (賃金+財・サービスの購入)民間投資政府投資財・ノンファクターサービス輸出財・ノンファクターサービス輸入政府一般財政収支(自国通貨、フロー)歳入補助金支出 経常費 設備投資費総合収支ファイナンシング 国内融資(純額)  銀行システム  ノンバンク 対外融資(純額)金融部門金融当局(自国通貨、ストック)対外純資産国内純資産  政府向け信用(純額)  銀行向け信用  その他(純額)準備金  通貨  銀行準備預金預金取扱期間(自国通貨、ストック)対外純資産銀行準備預金国内純資産  政府向け信用(純額)  民間向け信用  その他(純額)対金融当局負債民間セクター預金対外部門国際収支経常収支 財・ノンファクターサービス輸出 財・ノンファクターサービス輸入 ファクターサービス 移転(純額)  政府関連  民間関連資本収支・金融収支 直接投資 中長期的資本(純額)   民間   政府 短期資本(純額)   民間   政府総合収支外貨準備(対外純資産の増減)54 ファイナンス 2019 Feb.連 載 ■ 日本経済を考える

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