ファイナンス 2019年2月号 Vol.54 No.11
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法を整備するとともに、一定の価値評価の困難な無形資産の取引に関して税務当局が取引後の事実関係を参照して取引価格の適切性を検証することが可能となるよう、OECD移転価格ガイドラインの改訂内容等を踏まえた見直しを行う。また、経済の電子化に伴い、物理的な拠点なく事業を行う外国企業の事業所得に十分な課税が行えないといった現行の国際課税原則の問題が顕在化している。このような課題に対して各国が各々に対応すれば、企業のビジネス展開上の不確実性を増加させ、経済活動に負の影響をもたらすことから、グローバルかつ長期的に持続可能な解決策を2020年までにとりまとめるべく、G20の議長国として国際的な議論を主導していく必要がある。(5)円滑・適正な納税のための環境整備(ア) 金地金等の密輸に対応するための消費税における仕入税額控除の見直し金地金等に係る取引の適正化を図り、より一層の密輸抑止を進める観点から、金地金等に係る消費税の仕入税額控除制度の適用を見直す。具体的には、金地金等に係る仕入税額控除については、現行の帳簿に加え、本人確認書類の写しの保存を要件とする。また、密輸品と知りながら行った課税仕入れについて、仕入税額控除を認めないこととする。(イ)経済取引の多様化等に伴う納税環境の整備経済取引の多様化・国際化が進展する中、経済取引の健全な発展を図る観点からも、適正な課税を確保することが重要である。このため、取引の仲介業者等が保有するデータやスマートフォンを活用して電子申告を行う仕組みを構築するなど、納税者が自主的に簡便・正確な申告等を行うことができる利便性の高い納税環境の整備に向けて、官民が協働して取組みを進める。また、自主的な適正申告を担保する観点から、国税当局が事業者等に対して必要な情報を照会するための手続を整備する。具体的には、まず、現行実務上行われている事業者等に対する任意の照会について、税法上、国税当局が事業者等に対して協力を求めることができる旨を明確化する。その上で、高額・悪質な無申告者等を特定するため特に必要な場合に限り、国税当局が事業者等に対して、担保措置を伴ったより実行的な形により情報照会を行うことができることとする。ただし、適正かつ慎重な運用を求める観点から、照会できる場合及び照会情報を限定するとともに、事業者等による不服申立て等も可能とする。16 ファイナンス 2019 Feb.平成31年度予算特集:1平成31年度税制改正(国税)について 特集

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