ファイナンス 2019年2月号 Vol.54 No.11
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転の時期の選択に中立的な税制の構築が課題となっている。諸外国の制度をみると、生前贈与と相続に対して遺産税もしくは相続税を一体的に課税することにより、資産移転の時期の選択に中立的な税制が構築されている例がある。一方、我が国においては、平成15年に相続時精算課税制度が導入されており、本制度の適用を選択すれば、生前贈与と相続に対する一体的な課税が行われるが、本制度は必ずしも十分に活用されていない。このような現状を踏まえ、与党税制改正大綱においては、今後、諸外国の制度のあり方も踏まえつつ、格差の固定化につながらないよう、機会の平等の確保に留意しながら、資産移転の時期の選択に中立的な制度を構築する方向で検討を進めることとされている。さらに、検討の進捗状況を踏まえ、教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置についても、次の適用期限の到来時に、その適用実態も検証した上で、両措置の必要性について改めて見直しを行うこととしている(資料10)。(4) 経済活動の国際化・電子化への対応と租税回避・脱税の効果的な抑制経済活動の国際化・電子化は経済成長に貢献する一方で政策課題ももたらしている。国際課税制度の構築に当たっては、電子化を含む経済実態の変化や諸外国の動向を踏まえ、日本企業の健全な海外展開を支えるとともに、国際的な租税回避や脱税に対してより効果的に対応していく必要がある。平成31年度税制改正においては、BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを踏まえ、企業実態にも配慮しつつ、海外への過大な利払いや無形資産の移転を通じた租税回避に対してより効果的に対応するための措置を講ずる。〈過大支払利子税制〉・過大支払利子税制については、利子の損金算入制限に関し、対象利子の範囲の拡大及び損金算入限度額の算定方法の見直し等により税源浸食リスクに応じた強化を行う。〈移転価格税制〉・移転価格税制については、独立企業間価格の算定方資料10 我が国と諸外国の相続・贈与に関する税制の比較米・シャウプ税制生涯にわたる累積贈与額と遺産額(相続財産の額)に対して、遺産税(相続税)を一体的に課税死亡前の一定期間(独10、仏15年)の累積贈与額と相続財産の額に対して、相続税を一体的に課税独・仏日本選択制暦年課税死亡前3年以内の贈与を加算精算課税それ以前の贈与※一定期間内の贈与※相続生涯にわたる贈与※遺産○  に遺産税(相続税)を一体的に課税・・・米:遺産課税方式シャウプ税制:遺産取得課税方式遺産取得課税方式法定相続分課税方式・生涯の税負担が資産移転の時期によらず一定であり、資産移転の時期に中立的・一定の累積期間内では税負担は資産移転の時期によらず一定であり、資産移転の時期に中立的【暦年課税】・生前贈与と相続で適用税率に大きな差があることから、資産移転の時期に中立的ではない【相続時精算課税】・相続時精算課税制度の枠内では、税負担が資産移転の時期によらず一定であり、資産移転の時期に中立的※死亡前に贈与があった年は、「その年までの累積贈与額に対する課税額」から「前年までの累積贈与額に対する課税額」を控除した額を納付※死亡前に贈与があった年は、「その年までの10(15)年間の累積贈与額に対する課税額」から「前年までの9(14)年間の累積贈与額に対する課税額」を控除した額を納付相続相続財産○  に相続税を一体的に課税・・・それ以前の贈与(暦年単位で課税)死亡前3年以内の贈与相続相続財産○  に相続税を課税・・・相続税の課税回避(累進回避)を防止する観点から、相続税とは別に高い税率の贈与税を暦年単位で課税選択前の贈与(暦年単位で課税)精算課税選択後の贈与相続相続財産○  に相続税を一体的に課税・・・暦年毎の贈与税との選択制で、選択後の累積贈与額と相続財産の額に対して、相続税を一体的に課税 ファイナンス 2019 Feb.15平成31年度予算特集:1平成31年度税制改正(国税)について 特集

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