ファイナンス 2019年2月号 Vol.54 No.11
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資産保有の継続を定期的に確認することにより制度の適正性を確保する(資料6)。あわせて、現行の事業用小規模宅地特例について、相続前3年以内に事業の用に供された宅地を原則として除外する適正化を行う。(ウ)中堅・中小企業による設備投資等の支援地域経済の中核を担う中小企業は深刻な人手不足に直面しており、生産性向上や経営に対する支援を強化していく必要がある。このため、中小企業の設備投資を促進し、経営を支援する観点から、中小企業者等の法人税の軽減税率の特例及び中小企業向け投資促進税制の適用期限の延長を行う。また、地域経済を牽引する事業について集中的に支援する観点及び地方創生の推進の観点から、地域未来投資促進税制について、高い付加価値創出に係る要件を満たす場合に特別償却率を50%(現行:40%)、税額控除率を5%(現行:4%)に引き上げる等の見直しを行う。さらに、中小企業の事業活動に災害が与える影響を踏まえて事前防災を促進する観点から、事業継続力強化計画(仮称)に基づく防災・減災への投資に係る特別償却制度を創設する。(エ)地方創生の推進〈地域における不動産の有効活用〉・所有者不明土地の公的利用や空き家の発生抑制を進め、地域の未利用不動産の有効活用を図る観点から、譲渡所得に係る特例措置を拡充する。〈外国人旅行者向け消費税免税制度の利便性向上〉・地域の特産品等の販売機会の増加、外国人旅行者の消費拡大を図る観点から、臨時の販売場での免税販売を認める措置を講ずる。(3) 経済社会の構造変化等を踏まえた税制の検討(ア)個人所得課税のあり方個人所得課税については、我が国の経済社会の構造変化を踏まえ、近年、配偶者控除等の見直し、給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の一体的な見直し等の取組みを進めてきた。加えて、与党税制改正大綱においては、今後も、これまでの税制改正大綱に示された方針を踏まえ、経済社会の構造変化への対応や所得再分配機能の回復の観点から、各種控除のあり方等を検討することとされている。特に、老後の生活等各種のリスクに備える資産形成については、企業年金、個人年金等の年金税制、貯資料6 個人事業者の事業承継税制の創設(案)○ 既存の事業用小規模宅地特例との選択適用を前提に、10年間の時限措置として、新たな納税猶予制度を創設する。○ 法人の事業承継税制と同様、承継計画を作成して確認を受ける仕組みとし、承継後は事業・資産保有の継続を定期的に確認。○ 事業用の宅地、建物、その他一定の減価償却資産※について、課税価格の100%に対応する額を納税猶予※ 建物以外の減価償却資産は、固定資産税又は営業用として自動車税若しくは軽自動車税の課税対象となっているもの等・事業用宅地の面積上限(400m2)と事業用建物の床面積上限(800m2)を設定・法人の事業承継税制と同様、担保を提供し、猶予取消しの場合は猶予税額及び利子税を納付○ 相続時・生前贈与時いずれにも適用可能とする○ 事業等の継続要件・個人事業者の事業継続を支援するという政策目的との整合性を確保するため、相続税の申告期限後、終身の事業・資産保有の継続要件を設ける・個人事業者の特性も考慮した緩和措置を設ける※ 後継者の死亡・一定の重度障害、一定の災害の場合は猶予税額を免除※ 経営環境変化や心身の故障等により適用対象資産を譲渡又は廃業する場合、その時点の資産価額で猶予税額を再計算し、差額免除○ 債務控除に関する措置・債務控除を使った制度の濫用を防止するため、被相続人に債務がある場合には、特定事業用資産の価額から当該債務の額(明らかに事業用でない債務の額を除く)を控除した額を猶予税額の計算の基礎とする○ 税額の計算方法・後継者以外の相続人の相続税額に影響が生じない計算方法とする※ 貸付事業(アパート、駐車場等)は、現行の小規模宅地特例においても事業用とは別区分であり、本措置の対象外とする。この他、法人の事業承継税制における資産管理会社要件を踏まえた要件設定等、所要の措置を講じる。12 ファイナンス 2019 Feb.特集

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