ファイナンス 2019年2月号 Vol.54 No.11
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係府省庁において「消費税の引上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」を取りまとめた(資料1)。同時に、下請け事業者が買いたたき等の転嫁拒否を受けることがないよう、政府一丸となって転嫁対策を推進していくこととしている。(イ)住宅に係る措置消費税率引上げに際し、予算措置と併せて、消費税率引上げ後の購入にメリットが出るよう、住宅ローン控除を拡充する。具体的には、消費税率10%が適用される住宅取得等について、控除期間を現行の10年から13年に3年間延長する。11年目以降の3年間については、消費税率2%引上げ分の負担に着目した控除額の上限(各年において(1)建物購入価格の2/3%、(2)住宅ローン年末残高の1%のいずれか少ない金額)を設定する。適用期間は2020年末までである(資料2)。(ウ)自動車に係る措置消費税率引上げ後に購入した新車から自家用自動車(登録車)の保有に係る税負担を恒久的に引き下げることにより、需要の平準化を図る(資料3)。また、自動車の取得時の負担感を緩和するため、消費税率引上げ後1年間の措置として環境性能割の税率を1%分軽減する。併せて、政策インセンティブ機能の強化の観点から、自動車重量税のエコカー減税について、1回目車検時の軽減割合等を見直すとともに、2回目車検時の免税対象を電気自動車等や極めて燃費水準が高いハイブリッド車に重点化する(資料4)。(エ)軽減税率制度の実施について消費税率10%への引上げに併せて実施される低所得者への配慮のための軽減税率制度について、軽減税率の適用に関する具体的な事例も含むQ&Aの追加、個別の相談対応等、一層丁寧な対応による周知徹底を行う。また、事業者の事務負担の軽減等の観点からレジ導入等への支援を行うことで準備を更に促し、制度の円滑な実施に向け万全を期す。(2)デフレ脱却・経済再生、地方創生の推進(ア) イノベーション促進のための研究開発税制の 見直し少子高齢化が中長期的に経済成長を制約する要因となる中で、持続的な成長経路を実現していくためには、イノベーションの強化等生産性の向上により、潜在成資料1 「消費税の引上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」の概要○ 前回引上げ時の経験を踏まえ、税率引上げ前の需要増等に応じた値上げが妨げられないことや、税率引上げ後に禁止されない宣伝・広告のあり方等を改めて事業者に周知し、柔軟に価格設定できる環境を整備。○ 同時に、下請事業者が買いたたき等の転嫁拒否を受けることがないよう、転嫁対策を推進。1.価格設定に関する考え方・ 消費税転嫁対策特別措置法により、「消費税還元セール」など、消費税と直接関連した形で宣伝・広告を行うことは禁止されているが、これは事業者の価格設定のタイミングや値引きセールなどの宣伝・広告自体を規制するものではない。例えば、「10月1日以降○%値下げ」などと表示することは問題ない。・ 中小・小規模小売事業者に対して、来年10月の消費税引上げ後の一定期間に限り、ポイント還元といった新たな手法などによる支援などを行う予定。これにより、中小・小規模小売事業者は、消費税率引上げ前後に需要に応じて柔軟に価格設定できる幅が広がるようになる。2.適正な転嫁の確保・ 消費税率引上げ後、小売事業者が自らの経営判断により値引きを行うことに法令上の制約はないが、事業者間の取引については、当該小売事業者に製品・サービスを納入する下請事業者等がしわ寄せを受け、適正な価格転嫁ができず、増税分を負担させられるような事態があってはならない。来年10月の消費税率引上げに際しても、下請事業者等に対する不当な行為がなされないよう、引き続き、転嫁Gメンによる監視や関係機関による周知を厳格に実施。3.その他・ 消費税率引上げ後、消費の平準化を図るために一定の支援措置を講じる予定。事実に反して、消費税率引上げ前に、「今だけお得」といった形で消費者に誤認を与え駆け込み購入を煽る行為は、景品表示法に違反する可能性。・ 消費税転嫁対策特別措置法は、税込価格の表示(総額表示)を義務化している消費税法の特例として、「事業者が表示する価格が税込価格と誤認されないための措置を講じているときは、税抜価格を表示できる」と規定。これについて特に変更はない。・ 従来、消費税率の引上げを理由として、それ以上の値上げを行うことは「便乗値上げ」として抑制を求めてきたが、これは消費税率引上げ前に需要に応じて値上げを行うなど経営判断に基づく自由な価格設定を行うことを何ら妨げるものではない。 ファイナンス 2019 Feb.9平成31年度予算特集:1平成31年度税制改正(国税)について 特集

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