ファイナンス 2019年2月号 Vol.54 No.11
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平成31年度税制改正については、昨年12月14日に与党における税制改正プロセスを経て、12月21日に「平成31年度税制改正の大綱」が閣議決定された。本稿においては、「平成31年度税制改正の大綱」の概要や消費税率引上げに伴う対応等を中心に説明したい。なお、文中意見等にわたる部分は、筆者の個人的見解である。1. 平成31年度税制改正の基本的考え方安倍内閣は、これまで、デフレ脱却と経済再生を最重要課題として取り組んできたところであり、生産年齢人口が450万人減少する中においても、経済は10%以上成長し、雇用は250万人増加した。賃金も2%程度の賃上げが5年連続で実現しており、雇用・所得環境は大きく改善している。こうした経済環境の下、今こそ、少子高齢化という構造的な課題への対処に踏み出していく必要がある。高齢者から若者まで全ての世代が安心できる全世代型の社会保障制度へと大きく転換するとともに、財政健全化も確実に進めていくため、消費税率10%への引上げが平成31年10月に行われる。その際には、平成26年4月の消費税率引上げの経験を踏まえ、後述するとおり、需要変動の平準化に向けた措置が講じられることとなっている。また、軽減税率制度については制度が円滑に実施されるよう事業者の準備促進に向けた取組みを徹底するほか、消費税率の引上げと事業者による価格設定との関係について事業者・消費者の理解を深めていくための取組みを進める。少子高齢化が進む中、持続的な成長経路を実現するためには、潜在成長率を引き上げていくことが重要であり、「生産性革命」と「人づくり革命」に最優先で取り組む必要がある。さらに、経済の好循環を一層拡大していくためには、経済成長の果実を地方に波及させていくことが不可欠である。こうした観点から、平成31年度税制改正においては、消費税率の引上げに際して自動車と住宅に対する税制上の支援策等を講ずるほか、イノベーションを促進するための研究開発税制の見直し、経済活動の国際化・多様化等を踏まえた国際課税の見直しや納税環境整備等を行うこととしている。具体的な改正内容等は以下のとおりである。2. 平成31年度税制改正における主な措置等(1)消費税率の引上げに伴う対応今回の消費税率引上げに当たっては、税率引上げによる経済への影響を十二分に乗り越える支援策を講ずることとしている。(ア) 消費税率引上げ時における価格設定の柔軟化と転嫁対策前回の8%への税率引上げ時には、様々な物の価格が一斉に上昇し、引上げ前後に大きな駆け込み需要・反動減が生じた。この経験を踏まえ、小売業者が萎縮することなく柔軟に価格設定を行えるよう、消費税率引上げ前の需要増等に応じた値上げが妨げられないことや消費税率引上げ後に禁止されない宣伝・広告のあり方等を改めて事業者に周知し、また、消費者に誤認を与えて駆け込みを煽る行為を防止することで、需要変動の平準化を図っていくため、昨年11月28日に関平成31年度 税制改正(国税)について財務省主税局総務課 税制企画室長 内藤 景一朗8 ファイナンス 2019 Feb.特集

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