ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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た、安全で安心な暮らしを実現するよう、重要インフラの緊急点検を行った上で、防災・減災、国土強靭化のための緊急対策を2020年度までの3年間で集中的に実施します。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、新たな「防衛大綱」及び「中期防衛力整備計画」が策定されました。宇宙・サイバー・電磁波といった新領域にも対応できる体制の構築を推進するとともに、民生品の利用、原価の精査等の効率化・合理化を徹底しました。一方で過去最高となる税収62.5兆円を見込みつつ、歳出改革の取組は継続し、公債発行額を前年度に比べ1兆円減額するなど、財政の健全化も着実に進めます。平成31年度税制改正は、デフレ脱却・経済再生等といった、日本経済における多岐に亘る課題に対応したものとしております。デフレ脱却・経済再生を確実なものとするため、イノベーションを促進するための研究開発税制の見直しや、新たな個人事業者の事業承継税制の創設、地方創生に資する措置等を講じることとしております。あわせて、経済活動の国際化・多様化等を踏まえた国際課税の見直しや納税環境整備等を行うこととしております。今年10月に予定されている消費税率引上げにあたっては、税率引上げによる経済への影響を十二分に乗り越える支援策を講じ、経済・財政運営に万全を期します。予算面では、「臨時・特別の措置」として、中小小売業等に関する消費者へのポイント還元や、低所得者・子育て世帯向けプレミアム商品券等の措置を、税制面では、自動車と住宅に対する支援策等を講じることとしております。政府として、来年度予算・税制改正の早期成立を目指してまいります。政権交代以降、極めて短い期間で「デフレではない」という状況を創り出すことができました。日本経済は、2015年度以降、3年連続のプラス成長となるなど、民需主導の力強い経済成長が実現し、デフレ脱却への道筋を確実に進んでいます。一方で課題もあります。過去最高水準の企業収益を背景に、企業の人件費や設備投資は増加していますが、企業収益の伸びに比べればまだ弱いと言えます。結果として、企業の内部留保は増加し、依然として現預金の積み上がりも見られます。政府としては、企業が賃金引上げや設備投資に積極的に取り組めるよう、税制面などで環境整備を進めるなど、過去最高水準の企業収益をしっかりと循環させるために尽力しています。民需主導の好循環を拡大・深化していくため、経済界におかれても、好調な企業収益を、賃金の引上げや設備投資の拡大に活用していくことを期待しています。さらに、中長期的な視点に立つと、少子高齢化が最大の課題となります。少子高齢化を克服するため、子育て世代、子どもたちに大胆に投資するとともに、社会保障の安定化にもバランスよく充当し、お年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障制度への転換を図ることが重要です。そのためには、社会保障や財政の基盤がしっかりとしていなければなりません。引き続き「新経済・財政再生計画」に沿って、歳出改革等を行い、2025年度のプライマリーバランスの黒字化を実現します。特に社会保障の分野では、同計画に基づき、2019年度から2021年度の「基盤強化期間」において、自然増の抑制や、医療・介護サービスの供給体制の適正化・効率化、給付と負担の適正化等に取り組んでまいります。その上で、少子高齢化への対応という難題に対し、さらにどのような政策が必要となるのか、今年も職員一同と共に知恵を絞っていきたいと考えています。新年を迎え、現政権は7年目を迎えます。安定した長期政権であるからこそ、粘り強く困難な課題に取り組むことができます。引き続き、副大臣・政務官・補佐官とともに全力で取り組んでいくことをお誓い申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。 ファイナンス 2019 Jan.2

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