ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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イ.主体の選択自治体の役割の2点目は、「誰がこの事業を実施するのかよいのか」という主体を選択することです。自分(自治体)が事業をやるのではなく、事業を渡す係になるのです。ウ.信頼、市民合意形成、市民参加、協働自治体の役割の3点目は、信頼や市民合意形成、市民参加、協働というところです。情報公開、気付き、学ぶ機会の創設といったことを通じて賢い市民を育てていかないと地域は動いていかないのです。(4)地方創生の限界2015年から私は地方創生に関して、いろいろやらせていただいていますが、ここで地方創生の限界についてお話しします。1点目は、東京への人口集中はまだ止まっていないということです。2点目は、地方に仕事はあっても、若者が地域から出て行ってしまう。このミスマッチをどうするのか。これは若者がやりたい仕事が無いことが一つの理由となっています。本当は、一次産業は魅力的なのですが、それが魅力的になっていないので、魅力的なものにしていかなければならないという課題が残っています。3点目は、お金だけでは解決できないという問題です。地方創生交付金を含めてかなりのお金は配分されましたが、事業を遂行できるプロジェクトマネージャーがどの地域でもほとんどいないのです。日本版シティマネージャー制度を導入してかなりやっていただいていますが、なかなかできないので、財務局とも連携するなどして、どなたか一緒にやってくれる方が見つかることを願っています。4点目ですが、地域おこし協力隊では食えないということです。地方に行って年俸200万円ちょっとでは、責任ある仕事をするような人は行かないので、安定した雇用とはならないのです。(5)人口低密度化と地域的偏在が同時進行2050年には北海道では札幌以外の地域で人口が2010年比で50%以上減少してしまいます。東北も厳しいですね。あと山陰、九州なども同じで国土全体で50%以上人口が減少してしまう、という予想が出ています。また2010年に人口30万人以上都市圏(三大都市圏は除く)の人口の変化を見てみると、2050年には旭川などでは人口30万人を維持できなくなります。このように、現在は拠点となっているところが2050年にはかなりの規模縮小が見込まれています。(6)新たな政策の必要性そこで新たな政策が必要になってくるのです。ア.複数年度予算1点目は、事業継続の観点から複数年度予算化が不可欠ということです。単年度予算だとどうしても1月から3月に道路工事ばかりをすることになります。地方創生事業については3年分事業認証をいただいていますが、予算面では年度末でいったん切らなければならないので、地方創生交付金について3年連続で事業を実施できるようにしていただきたいと思います。イ.地方交付税の配分強化2点目は税の配分についてです。地方交付税の配分は人頭数が主ですが、人頭数だけでなく、面積や安全保障とかの地政学的な部分も加えた配分を勘案することによって、もう少し配分を見直していただきたいと思います。面積は広いものの人口が少ない地域がたくさん出てきています。お金があれば森林に派遣できる準公務員的な人材を雇って地域経営ができるのですが、ここで人が減ってくると一気に海と森と畑が荒れてきますので、人が減る分を面積や安全保障、特に国境沿いの地域のところにはもう少し地方交付税の配分強化をすべきです。ウ.人の地方への移動3点目は、現在地方創生においては個人の意思による地方移住をお願いいしており、各地で移住・定住フェアも開催していますが、まだ大きな流れにはなっていません。そこで、そろそろ半ば強制的に移動させる戦略を打ち出さないと、地方の疲弊が予想以上に速く大きいので、地方がまだ元気なうちに手立てを講じる必要があります。具体的には、1点目に、県庁や都心自治体からの公務員の派遣です。費用は都市住民のお金で賄うのです。東日本大震災の時も大勢の公務員が被災地に入る53 ファイナンス 2019 Jan.連 載 ■ セミナー

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