ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
57/80

(2)新しい産業の概念私は従来の農業・漁業、製造業、卸売業・小売業、サービス業といった分類ではなく、「社会潮流と課題解決のための産業」「官と民が一緒になって行う産業」「先回りした産業」の3つに分類し直すことが必要だと考えています。このように分類し直すと、1次産業、2次産業から始まって、どの産業も必要になるのです。全部使って社会課題を解決していかなければならないのです。ICTやIoTはそのための土台であり、ICTを使って農業や製造業を高度化する、という形なので、かなり融合化しなければなりません。この新たな3つの産業区分を踏まえて地域は産業を創り出していった方が良いですよ、と申し上げています。特に「先回りする産業」というのは、データベース、基幹を自治体が変えていくので、この部分はかなり大きな産業になっていくと考えています。(戦略1)地域で考え、決定するでは、実際何をしなければいけないのか。まず全国同一、統一基準をやめることです。自治体の規模があれだけバラバラですし、何でも一律というのをやめるべきです。また、複合化・融合化の視点を持つことです。施設を単体で作ることはやめるのです。さらにサービスも複合化するのです。サービスも官だけでやるのではなく民との複合化をやってみるのです。(戦略2)地域の人材を活かす体制が必要なので、地域リーダーが重要になります。首長が重要です。また、今こそ公務員の時代です。あと議会改革、さらに住民との共働が重要になってくるので、賢いシチズン、つまり今の時代をよく分かっている市民を作り上げていくこともとても重要です。(戦略3)土地政策土地政策はもっと重要です。まず1点目は、全国で見ると空き家と所有者不明の土地が国の集計で北海道1個分ぐらいあるということで、その部分を解決していくための諸制度を変えていくことが必要です。2点目は、道路、歩道、公共空間について有効活用していく必要があります。オープンカフェ等に歩道がなかなか使えないというような状況を変える必要があります。3点目は、市街地と市街化調整区域との線引きを厳格化していく必要があります。なぜ、畑のど真ん中にいきなりショッピングセンターができてしまうのでしょうか。とても疑問です。4点目は、農地法から農業法へ、ということです。農地を守るのではなく、農業を守るようにしなければなりません。私は、食品工場を農地の上に建てることを認めていく必要があると考えています。5点目は、住宅と業務・商業の一定の割合を制度化することです。米国のポートランドでは一定のエリアにおいて、住宅と業務・商業施設との割合が1:4になるように整備されています。(戦略4)自治体のエリアマネジメント自治体のエリアマネジメントについては、まず、地域での徴税権の導入促進が挙げられます。最近日本版BID(Business Improvement District:ビジネス活性化地区)が動き出ましたので、どこかの自治体でやっていただきたいと思っています。次に、非営利型株式会社(Non-Profit Company)設立法の制定が挙げられます。非営利企業を立ち上げるための法律が現在ありません。資本金で資金を集めていく形態は、現在では営利企業を対象とした会社法しかないのです。ここを何とかしていく必要があります。最後に、民間との連携促進です。ここのところはPPPの導入でかなり動いてきました。(3)税金減少、人口減少の中での自治体の役割ア.地域への資本増強係自治体の役割として1点目は、地域に資本を増強する資本増強係ということです。地方は行革のままです。安くすること、経費を抑えることが至上命題になっています。官でやることを指定管理に替えたらなぜ安くなってしまうのか、不思議に思っています。千代田図書館のように指定管理にもっとお金を出して、良いサービスを民間から引き出すという形にしないといけません。地方創生に取り組む人口5万人未満の自治体について言うなら、自治体が適正価格、安すぎない価格を支払うことにより、受託企業や契約企業が正社員を雇用できるぐらいのことをやらなければブラック企業がたくさん出てしまい、地域が疲弊することになります。 ファイナンス 2019 Jan.52職員トップセミナー 連 載 ■ セミナー

元のページ  ../index.html#57

このブックを見る