ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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最近では、買い物の際、グーグルやアマゾンといったプラットフォームから入っていく人が多いのですが、それと同じようにプラットフォームというまとめられたホームページから入っていき、そこで観光等の予約を取り決済していく、という形です。最近の私のお気に入りのプラットフォームを紹介します。1点目は「BOOK&BED」です。東京にあるのですが、本屋とカプセルホテルが一緒になっています。一部屋3,000円から4,000程度で長期滞在も可能です。本は読みきれないほどあります。一緒になることで本も売れるし、カプセルホテルも賑わう、というシェアリングエコノミーの相乗効果を発揮したものとなっています。もうひとつ、「MYROOM」というのは、長野善光寺の駅前でやっている不動産屋さんですが、空き家物件とリノベーションを一緒にやるツアーを毎月組んでいます。毎月3件ほど回ります。「古い家をカフェに改装するなら200万円ぐらいですね。」というように、不動産屋と工務店と設計技師とデザイン会社がチームを作って、空き家物件をリノベーションし、ホームページまで立ち上げるところまでをワンストップでやるのです。このほか、観光を支えるプラットフォームの一つの例として、地方のイベントを紹介する「TABICA」というシェアリングエコノミーのプラットフォームもあります。現地までは自分で行く必要がありますが、現地ではいろいろなオプショナルツアー等が用意されているというものです。これは総務省のシェアリングエコノミー大賞を受賞しました。私は、自治体や観光協会の自前のホームページなどでなく、こうした「TABICA」のようなプラットフォームに載せないと地方のイベントには誰も来てくれませんよと地方自治体に申し上げています。地方の経済をプラットフォームが強くする、という形がいろいろと出てきています。これは官民連携という形で一緒にやれる事業であると考えています。(6)新たな潮流SDGsSDGs(Sustainable Development Goals:2015年に国連で採択された持続可能な開発目標)については、今年から動き始めましたので、これを今年の一つのトレンドにしていけるのではないかと考えています。SDGsに関しては、いつも兵庫県豊岡市の事例を申し上げています。コウノトリが舞うくらい安全で豊かな環境のもと、有機農法「コウノトリ育む農法」で作られたコメは高いけれど売れる、これは経済・環境・社会が回るということです。5. 地域で産業を起こす手法と自治体の役割(1)産業・産業振興・産業振興政策こうしたことを含めて、では産業をどう創るのか、ということになるのですが、産業というのは社会の課題を解決するときに生まれていき、時代を反映して時代とともに変化するものです。また産業とは、人間が必要とする「道具・物」「サービス」「コト」「時」といったものを生み出したり提供したりする経済活動のことだと考えています。そこで、私は「先に産業を創ろうとはしないでください。」と申し上げています。社会の課題を見ればその周辺に産業が生まれざるを得ないのです。人間が何かをしたい気持ち、遠くに行きたい、誰かと話したい、という気持ちから自動車や飛行機、電話が生まれてきたのです。私は産業を3分割して考えることにしています。「産業」と「産業振興」と「産業振興政策」です。産業については今説明したとおりです。では産業振興とは何か。産業を振興させるということは、一定の戦略に基づき、成長が期待できる分野や意欲的に取り組む成長可能な企業を徹底的に支援することです。産業振興は基本的に依怙贔屓です。平等はないのです。しかし、産業振興政策となると平等が必要になります。機会は均等に設計しなければいけない。ある分野、ある一定の企業を一つでもいいから大きくする目的で制度を作っていく必要があります。しかし、特定の企業のためだけに制度を作るのではなく、だれでも来ていいよ、とゲートは広くするけれど、既にピンポイントで支援する企業の名前が見えているから成功するのです。それくらいの戦略を作って取り組んでほしい、と各自治体に申し上げています。51 ファイナンス 2019 Jan.連 載 ■ セミナー

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