ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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めたCD売上げよりもコンサートの需要の方が上回ってしまったのです。今後圧倒的にコトへの需要が増えていくでしょう。団塊ジュニア世代から団塊世代、すなわち40歳台中ごろから80歳ぐらいまでの購買力が非常にある。この年代の女性たちはお金と行動力があるので、全国どこかに出掛けています。これは観光という形態ではないので、観光の人数計算には入ってきませんが、全国で氷川きよしを巡っていったりとか、嵐やAKBのコンサートに行ったりと、相当の数の人間が動いているのです。今私が注目しているのは韓国の東方神起です。彼らは2017年11月から2018年6月の間に5大ドームと日産スタジアムでのツアーで100万人を動員しました。チケットの値段が大体12,000円なので100万人分で120億円。このほか交通費・宿泊費・食事・お土産がチケット代の5倍ということで600億円。つまり東方神起という1ユニットで720億円の市場を作っているのです。これが嵐だともっとすごいはずです。また、東方神起は、地方創生ということを言っています。つまり彼らがツアーを行う際にはその地域の商店・企業とタイアップしたコラボをして、この100万人の方々が地域でもっとお金を落としていただく工夫をしようということで、例えば、日産スタジアムでのツアー時には、崎陽軒は東方神起とコラボしたシュウマイ弁当、横浜ラーメン博物館でもコラボのラーメン、日産スタジアムへと続くスタジアム通りでは東方神起の楽曲やライブ映像を流す、横浜市営バスは東方神起オリジナルデザインの1日乗車券を発売する、ということになったのです。1アーティストが動くことで地域の経済が良くなるのです。実は日本では今、ハコ(施設)が足りないと言われています。東京が今いろいろ建て替え中ということで、アーティストが地方に出てくることになりますので、地方の拠点にはライブなどができる会場がもっと増えればいいなと思います。ハコモノはダメ、と言われてきましたが、違った見方をするとハコも必要であって、ハコからにじみ出てくる経済について目を向ける必要があります。(4)IoTとAIIoTとAIも動いてきています。消費者向けもいろいろ動いてきています。これからスマホが少し安くなるともっとスマホも動き出すでしょう。また最近はペーパーレスの方向に進んでいるので、タブレット端末で会議を行うことも広がりつつあり、タブレット端末が学校、企業、省庁、市役所にも相当入ってくるので、この需要は一定程度の伸びが期待できると考えられます。これはハードの部分です。次はシステムの部分です。官民データ活用推進基本法ができ、オンライン申請が原則となっていく。自治体では職員の3分の1が窓口要員ですが、窓口申請がなくなることで、この3分の1の職員を子育てや福祉、教育等の分野に回すことができるようになります。オンライン申請に向けたシステム改善は自治体の大小にかかわらず必ず発生するものですので、このシステム改善のところで大きな産業の芽が生まれてくるのです。あとビッグデータです。先ほどご紹介した会津若松の事例はICTオフィスを作るだけではなくて、会津若松市役所が地域の社会実験をたくさん行うことによって社会データをたくさん蓄積し、それを分析することによって他の自治体に横展開するというモデルです。これからかなりの社会実験が会津若松で行われることになります。私が会津若松でお勧めしているのは、地域全体でお金を使わない、というキャッシュレスの社会実験です。今年9月に学生を連れて香港、マカオ、深圳に行きましたが、中国ではカードレスで、スマホ決済です。ここまで進んでいるのはすごいなと思いました。(5)シェアリングエコノミー:共有型経済もうひとつの時代の大きな流れはシェアリングエコノミー、共有型経済です。Airbnb(宿泊施設・民宿を貸し出す人向けのウェブサイト)は住宅宿泊事業法(民泊新法)が整備されて動き出してきましたし、UBER(アプリによる配車システム)についてもUBER型といわれるスマホ決済でお互い様タクシーみたいなところは動き出すかなと思います。IoTと観光も含めて、これからはプラットフォームというものを形成していく必要があると思います。 ファイナンス 2019 Jan.50職員トップセミナー 連 載 ■ セミナー

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