ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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(coworking)スペースに改修してそこで毎週行われており、東京から移住してきた人でも5年学ぶことでその後東京に戻っても食べていけるようになるITスキルを身に付けることを目標としています。この村は何もないところなので、古民家を改装してゲストハウスにしたり、地域内循環ワゴンをやったり、道の駅を改修して岡山生協に入ってもらって住民のためのスーパーを開設したり、といったことに取り組んでいます。そうした全体的なコーディネートの部分を私の方で担当しています。(事例2)福島県会津若松市こちらは平成29年度地方創生拠点整備交付金を使って、ICTオフィス(情報通信オフィス)を会津若松市に作ることになりました。会津大学とアクセンチュアが連携して、データを分析できる人材を大量に育成するものです。500名収容できるオフィスは現在、かなり出来上がりつつありまして、アクセンチュアは200名を東京から移籍させていますし、NECも100名を移籍させるといったように、500名の入居がほぼ確定しています。せっかく育てた会津大学の若者を全国に拡散させずに、全部ここで受け入れながら、データサイエンスの拠点づくりをするものです。PPP(Public-Private Partnership:官民連携)でこの事業を進めたことも特色です。地元企業がSPC(Special Purpose Company:特別目的会社)を立ち上げて、建物を建てるところから民間が担い、運営も民間型ということで、地方創生で初めてPPPが採用された事例となっています。私は東洋大学でPPPコースの非常勤講師も務めており、コーディネーションも私の方で担当しました。4. 変化する社会  ビジネスチャンス到来地方には仕事が無いと言われる状況から、今は人口5万人未満の小さい自治体でも有効求人倍率が既に1.2から1.5ぐらいにまでなってきている、さらに以下に述べるような社会変化がビジネスチャンスを生んでいる、こういうことをご理解いただきたいのです。(1)外国人観光客の増加一つ目の変化は外国人観光客が急増してきていることです。私は最近、東大阪の仕事があり、よく関空経由で行くのですが、関空ではほとんど日本人を見かけません。中国語、韓国語、他の言語が飛び交い、アウェイ感を感じます。IR(統合型リゾート施設)ができるともっと外国人観光客が増えるでしょう。外国人観光客は現時点で既に2,800万人を超える状況にあり、2020年の4,000万人という政府目標はかなり現実味を帯びた数字になるでしょう。地方空港について、かつて私はこんなものは無駄だと思っていましたが、これだけのインバウンドが来ると、地方空港を国際空港化することが地方創生に寄与するのではないかと思います。せっかく作ったのなら使うべきです。特に東京近郊の空港がチャーター分を含めて動き出すのではないかと予測しています。(2)越境ECの拡大また(中国人観光客の)爆買いが無くなったと言われていますが、実は違います。かつては電気釜を10個抱えて帰国する光景もありましたが、今はサンプルとして1個だけ持ち帰るのです。それ以外は越境EC(Electronic Commerce)、つまりインターネットで買う方が増えており、爆買いから個人貿易の方に移ってきています。中国にはアリババとかいろいろなサイトがありますが、中国人はそうした中国のサイトはあまり信用しておらず、わざわざ日本のサイトで購入するのです。日本がインターネットの恩恵を大いに受ける状況になってきています。特にサプリメント、医療用の化粧品、生理用品、オムツといったところは日本製品の質が良いのです。(3)モノからコトへもう一つの変化はモノからコトへ、ということです。最近、私の地元三鷹の近くの伊勢丹府中店の閉店が決まりました。432万人の人口がいる多摩地域でさえこの状況ですので、地方では百貨店など持ちようがないのです。モノは売れないのです。人とカネはどこに行ってしまったのかというと、コトの方なのです。自分が何かを楽しむことにお金をかける時代になってきたのです。例えば、2014年にはダウンロードを含49 ファイナンス 2019 Jan.連 載 ■ セミナー

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