ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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未婚・非婚化の要因の2点目は、雇用不安です。これについては、非正規雇用の改善、正社員化、もう一つは女性の賃金を徹底的に上げることが重要です。私は扶養控除には反対です。専業主婦を前提にした社会づくりに対してどこかで舵を切る必要があると思います。3点目は、低い出生率です。これについては、東京に集まり過ぎた人口を分散させることが必要です。4点目は、子供を育てるのにお金が掛かることです。これに対しては子供を生むことに対して特典を与えることが重要です。学費の無料化と住宅に関するものです。住宅手当の増額や思い切って住宅を無償で提供するなどといった大胆な施策が必要です。3.地方創生戦略の成果(1)人口減少顕著な地方と高齢者急増の都市部地方創生については、2015年にすべての自治体が地方版総合戦略を策定して、国の方でもかなり予算化していただいたので、相当成果が出てまいりました。地方創生は2つの流れがあります。一つは人口5万人未満の1200の自治体の課題、もう一つは都市部の課題です。これらは全く違う戦略が必要となります。地方では、高齢化のピークは過ぎ、人口減少と過疎化へ向かっていく、合併による自治体面積の拡大が進み、拠点施設が多くなったのでその統廃合にお金が掛かる、そして、一番の課題は農林水産業の高齢化、廃業による耕作放棄地の拡大です。都市部においては、高齢者急増と医療、福祉施設不足が顕著であること、生活保護世帯の増加による財政圧迫、交通をはじめとした都市インフラコストの増大、女性就業拡大による保育施設不足といったことが大きな課題です。こうした地域それぞれの課題を踏まえ、「しごと創生」「働き方改革」「地方への人の流れ」「まちづくり」という4つの分野で、それぞれ事業を進めているところです。平成30年度地方創生事業と推進交付金について見てみますと、「しごと創生」の分野が非常に多くなっています。また、「まちづくり」の部分も多くなっています。このほか観光事業に取り組んでいる地方も多くなっています。(2)地方創生の取り組み事例ここでいくつか私が携わっている地方創生の事例をご説明します。(事例1)岡山県新庄村最初は、社会増に転じた人口1,000人の村、岡山県新庄村の事例です。新庄村は米子に近い県北の村で、明治以降一度も合併せずにやってきたところです。明治初期からの豪邸など約70軒が出雲街道に沿って美しい街並みを作っており、日露戦争勝利を祝う「がいせん桜」と共に残っています。桜祭りには1,000人の村に2日間で3万人の人出で賑わいます。この村には基本的に仕事がありません。そこでITを使って仕事を創ることにしています。この村の特色というのは「村民一家族」という考えのもと、誰かの子供ということではなく、村の子供として村全体で育てていくということです。子供が18歳になるくらいまではここに住み続けてほしいということで、移住・定住の促進・強化を進め、ほぼ無料で子供を育てることができます。私はここでまちづくり会社の「株式会社まちづくり新庄村」を立ち上げました。いわゆる地域商社という形です。出資は新庄村が600万円、津山市のIT企業の株式会社RELATIONが200万円、東京三鷹にある私の友人が経営する株式会社コミュニティ・クリエーションが200万円です。「まちづくり新庄村」の社長には株式会社RELATIONの社長にお願いしました。株式会社RELATIONは住民のITスキルの向上を担当し、株式会社コミュニティ・クリエーションは東京からITの仕事を取ってくることを担当します。ITスキルの研修は、築百年の家をコワーキング岡山県新庄村のがいせん桜 ファイナンス 2019 Jan.48職員トップセミナー 連 載 ■ セミナー

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