ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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も、トレーニング(経験)を積んでスキルアップすることですが、経験値やスキルがあっても結果が伴わない場合、2つの点に注意が必要です。(ア)メンタル面での問題を抱えている可能性があります。傾聴スキルを使って、じっくり話を聞く姿勢を示し、対策を講じる必要があります。(イ)先ほどの目標設定行動の5つの鉄則のうちの「自分や他人に役立つ行動」という部分に納得していない可能性があります。例えば、昇進したくない人に無理やり昇進させようとしても効果は上がりません。その場を乗り切るための行動しかとらないためです。この場合も、傾聴スキルを使った説得、人生目標の再設定などが重要です。(5)アンケート調査への回答a.中高年世代の職員・非正規職員等に向けてモチベーションが下がり気味の40代、50代の中高年世代の職員には、人生100年時代を見据え、退職後も使えるスキルや強みを支援する姿勢を見せることや、部下や組織に必要とされているという「承認」を与えることが重要と考えます。非正規職員など様々な雇用形態の方々については、この職場で「承認してもらえる」「自分の強みを育ててもらった」と思えるような、人生の充実感を持ってもらうことが大切です。いずれにしても、「この職場で働くことに誇りを持っている」と部下から思ってもらえるかどうかは、皆さんの「情報収集能力」や「目標行動設定」「承認行動」にかかっていると言えます。一方で、アンケート結果から、「懇親会などの場が減っており、部下とプライベートな話をする時間がない」という、情報収集の窮状報告もありました。私の提案は以下のとおりです。(ア)公式な面談の時間を作る(イ)目的が分かれば出席しやすくなるので、仕事が始まる前の「質問会」、終了後の「検討会」のように発言を伴う会を設定する(ウ)懇親会では終了時間を明確化するb.厳しく指導する方法怒鳴ったり叱責したり、高圧的な感情表現が「厳しい」指導ではありません。スポーツと同じで、トレーニングメニューを少々きつめに用意すれば、笑顔で接しても十分「厳しく」なります。ただ、その塩梅は本人に確認する必要があります。c. 様々なハラスメントの制約がある中での人間構築をどう進めていけばよいのかハラスメントの境界線というのは誰も分かっていない「感情的」なものです。「コピー10部取って」は、人間関係の距離によって、信頼にも、パワハラにもなり得ます。パワハラを気にして消極的な行動をとるよりも、信頼関係構築に力を入れていただきたく思います。具体的には、(ア)承認行動・自己開示によるギャップの解消(イ)公式面談から始めて段階的に距離を縮める(ウ)その部署のベテラン職員など人間関係に詳しい人脈を持っておくなどです。6.さいごにリーダーは、戦略的に相手を動かす、そして、目に見える行動や共通理解が得られる言葉で「信頼」を伝え、意思疎通が図れる環境を醸成する。更に、行動改善を促したい場合は、自分の経験値や感情に捉われず、まずは、相手の状況や環境を調査・観察した上で課題を洗い出し、具体的な目標行動を設定、承認を重ねて成長を助け、共通の「意識」を作る。本日はこうした内容をお話ししました。少しでもお役に立てれば幸いです。職場で素晴らしいリーダーシップを発揮してください。期待しています。ご清聴ありがとうございました。講師略歴阪田 陽子(さかた ようこ)フリーアナウンサー/ 公益財団法人 大原記念労働科学研究所 協力研究員1990年 奈良女子大学文学部教育学科卒。2017年 日本大学大学院総合社会情報研究科博士前期課程修了。人間科学修士。NHK報道局に所属し、総合テレビの第一線にて15年以上活動する、唯一人のフリーアナウンサー。「ニュースウォッチ9」などを経て、現在は「ニュースチェック11」にてニュースリーダー担当。アナウンサー業以外では、プレゼン指導のほか、ビジネス・ブレークスルー大学オープンカレッジ「リーダーシップ・アクションプログラム」講座にて、幹部クラスのビジネスコーチとして活動。 ファイナンス 2019 Jan.46上級管理セミナー連 載 ■ セミナー

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