ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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ここで重要なのは、型の実践に対して「承認(評価・感謝・期待等)」することです。承認されて初めて役立つ喜びを知り、更なる承認を求めて型を実践します(「承認」詳細は後述)。「経験」を積むことがストックを作ることとなり、初めて新しい「意識」が生まれ、「公務員」がお互いの共通解釈となるのです。「意識」は作るもの、作られるものであり、誰もが最初から持っているものではないのです。(2)意識が変わっても行動は変わらずアンケート結果「今の職場で改善したいこと」を見てみますと、「当事者意識」「意識改革」「業務改善意識」といった「意識」関係が多く挙がっていました。「意識」が変わることはとても重要です。しかし「意識」が変わっても、必ずしも「行動」は改善しないことをご承知ください。1つの事例をご紹介します。ごみの分別収集が進まない、あるマンションの住人たちに対して自治体の方が半年くらいかけて分別収集の大切さについて啓蒙活動を行った結果、分別収集が重要だという「意識」は非常に高まりました。しかし、ごみの分別収集という「行動」にはつながらなかったのです。最終的には、収集日や収集場所といった環境を整えることで、行動改善されたのです。(3)「型」を覚えるアンケート結果に多く記載されていました「傾聴」と「部下による簡潔な報告スキル」を取り上げ、「型」を利用した改善法を提案します。傾聴の「型」は、「3分間黙って聞く」「10秒に1回頷く」「言葉尻をオウム返しする」等です。結果、「自分のことを聞いてくれている」と解釈され、相手に「共感」を伝えられます。共感は、ご自身が心で「する」ものではなく、相手に「してもらう」ための行動をとることがポイントです。次に、「簡潔な報告」のトレーニングは、依頼に効果的とされる、SMART法を用いた手法を提案します。制限時間を決めて、「結論を具体的に示す」、「定量化して必要性を示す」、「依頼したい行動を示す」、「現実性を正直に示す」、「期限を示す」の順に報告するよう伝え、報告にきたら忘れず「承認」します。5.行動の基礎ここまで、行動改善には、行動の原因を「気持ち」に求めない理由を説明してきました。ここからは、人が行動する仕組みと、行動を改善する具体的な手続きについてご説明します。人間は、快・不快によって行動が増減するとされています。(1)人間を構成する2種類の行動行動分析学においては、人間の行動は2種類で構成されています。「レスポンデント行動」と「オペラント行動」です。レスポンデント行動は先天的な行動、ないしは後天的学習によって身に付けた行動のことであり、オペラント行動は、全て、後天的学習で身に付けた行動です。レスポンデント行動では、先にキッカケがあり、それによって体内に変化が起こるパターンです。皆さんご存知の「パブロフの犬の実験」を例に挙げます。まず、犬は肉を見る(キッカケ)と、唾液が出ます(行動)。これは先天的なものです。次に、犬が肉を見るときに、同時にメトロノーム音を聞かせ続けると、やがて、肉を見せずに、音を聞かせるだけで、唾液が出るようになります。これに対し、オペラント行動は、ある行動を増加させるために、行動後に報酬を与えるものです。例えば、ネズミにレバーを押させる目標を設定した場合、「レバーを押す(行動)と、餌(報酬)が出る」という仕組みを作ります。すると、ネズミに人間の言葉は通じなくても、レバーを押す回数がどんどん増えます。目標行動が増える状態を、我々は「やる気がある」と解釈します。この報酬によって目標行動を増加させるオペラント条件付けが「やる気を作る」操作です。(2)「信頼」「モチベーションの作り方」レスポンデント行動及びオペラント行動を職場で起こる人間関係の例に当てはめてみます。a.レスポンデント行動レスポンデント行動は、何も感じていなかった対象物に対して、感情が乗り移る現象を示します。仕事ぶりが「承認(=報酬)」されると、人は無条43 ファイナンス 2019 Jan.連 載 ■ セミナー

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